定款変更のやり方と押さえておきたい注意点

定款変更のポイント

Aさんは、中古ブランド品の販売を始めようと思って調べていると「古物商許可申請をするには、定款に『古物営業法に基づく古物商』という目的を入れておかなければいけません」と書かれているサイトを見つけました。

「えーっ!うちの会社の定款の目的にはそんなこと書いていないんだけど、どうやって変更するんだろう!?」

定款の変更は、何を変更するかで、法務局への登記が必要か不要かが変わってきます。

今回は、会社の定款を変更する場合、どういった変更をする場合に法務局への登記が必要か、どういった書類を提出するのか、定款変更にかかる費用などを判りやすくご説明したいと思います。

なお、定款の作成時のポイントに関しましては『【定款の作り方】雛型で大丈夫?定款を作る時にチェックするポイント』をご参照下さい。

 

定款変更とは

定款の変更方法会社を設立する際に定款を作って、公証役場で認証をしてもらいますが、「定款変更」はこの認証された定款を変更して、新たに公証役場で証人してもらって法務局に登記するわけではありません。会社の設立時に作成、認証、登記をした定款は「原始定款」といって変更することはありません。

公証役場での認証は「原始定款」のみですので、定款の内容を変更する場合の認証は不要なのです。

では、定款の変更はどのようにおこなわれるのでしょうか?

定款の内容を変更する場合、まずは株主総会で決定します。社長一人の会社でも株主総会で決定しなければなりません。株主総会で定款内容の変更が決まった場合、その議事録を作成します。

「どのような内容を変更したか」によって、この議事録を法務局に登記しなければならないか、登記をしなくてもよいかが変わってきます。

 

定款変更が必要な場合

会社に関する事項を変更する場合、必ず定款を変更しなければいけないというわけではありません。法律で決められた「登記申請が必要な定款の項目」を変更する場合にのみ、定款の変更及び登記申請が必要になります。

 

登記が必要な定款変更

商号の変更(登記免許税3万円)

商号の変更とは、会社の名前を変更することです。例えば「株式会社○○」から「○○株式会社」にするのも商号の変更になります。

【必要書類】

  • 登記申請書(商号の変更) 書き方見本 Word PDF
  • 株主総会議事録
  • 収入印紙貼付台紙(3万円の印紙を貼り付けたもの)
  • 印鑑届出書
  • 委任状(代理人に委任する場合のみ)

 

事業目的の変更(登録免許税3万円)

事業目的を変更する理由として、一番多く挙げられるのが「許認可事業を始めたい」というものです。下記のような事業を始める場合には定款に指定された目的を記載されている必要があります。

  • 古物商 ・リサイクルショップ(警察署)
  • 宅地建物取引業(国土交通大臣又は都道府県)
  • 建設業 (国土交通大臣又は都道府県)
  • 飲食店(保健所)
  • 介護事業(都道府県)
  • 旅行業(地方運輸局又は都道府県)
  • 労働者派遣事業(労働局)
  • 一般酒類小売業(税務署)
  • 産業廃棄物処理業(都道府県)
  • 一般貨物自動車運送事業(運輸支局)
  • 理容所(保健所)
  • 美容所(保健所)

【必要書類】

  • 登記申請書(商号の変更) 書き方見本 Word PDF
  • 株主総会議事録
  • 収入印紙貼付台紙(3万円の印紙を貼り付けたもの)
  • 委任状(代理人に委任する場合のみ)

 

本店住所の変更・同管轄内(登録免許税3万円)

管轄登記所内で本店を移転する場合、定款に記載されている内容とことなる住所になった場合に定款変更と登記が必要になります。

例えば「本店を兵庫県尼崎市に置く」と定款に書かれていて、尼崎市内で本店を移転する場合は定款変更の必要はありません。

【必要書類】

  • 登記申請書(商号の変更) 書き方見本 Word PDF
  • 株主総会議事録
  • 取締役会議事録又は取締役決定書
  • 収入印紙貼付台紙(3万円の印紙を貼り付けたもの)
  • 委任状(代理人に委任する場合のみ)

 

本店住所の変更・管轄外(登録免許税6万円)

管轄登記所外への本店を移転する場合、移転前の住所を管轄する登記所と移転先を管轄する登記所へそれぞれ申請する必要があります

ですから登録免許税額もそれぞれ3万円ずつかかりますので、合計6万円となります。

但し、登記申請は、登記申請書2件分と移転先で登録するための印鑑届書1通を、本店移転前の管轄登記所に申請します。

【必要書類】

  • 登記申請書(商号の変更) 書き方見本 Word PDF
  • 株主総会議事録
  • 取締役会議事録又は取締役決定書
  • 収入印紙貼付台紙(6万円の印紙を貼り付けたもの)
  • 印鑑届出書
  • 委任状(代理人に委任する場合のみ)

 

その他登記が必要な定款変更

上記以外にも、発行可能株式総数の変更、取締役会、監査役等の機関構成の変更、公告方法の変更、株券を発行する旨の定めの設定又は廃止など、登記が必要な定款変更の項目は多岐にわたりますので、もしご自身のされたい変更が登記が必要な定款変更なのか判らない場合は、法務局又は専門家へお問い合わせ下さい。

 

登記が不要な定款変更

定款の変更が必要であっても、登記が不要な変更もあります。登記の不要な定款変更は届出は必要ですが、登記費用はかかりません。

 

事業年度の変更

事業年度の変更は登記事項ではありませんので、登記をする必要はありません。

事業年度を変更したい場合、まず株主総会で、定款の事業年度の変更を行い、臨時株主総会の決議事項を議事録として作成します。

議事録作成後に、税務署(異動届出書)、都県税事務所、市役所などに事業年度変更の届出をします。

 

複数の項目を変更する場合

定款内容を変更して登記する場合、複数の項目を変更したからと言って、全て合算されていく訳ではありません。登録免許税法という法律の中で「区分」という分けられ方をしていて、同じ区分内のものであれば、複数申請しても1つと同じ金額になります。

例えば、「商号変更」と「事業目的変更」は同じ区分ですので、2つ変更を申請しても登録免許税は3万円になります。

「本店の移転」と「事業目的変更」は別の区分になりますので、この2つを変更する場合の登録免許税は6万円になります。

登録免許税の区分は非常に複雑ですので、詳しくは管轄の登記所又は専門家にご確認下さい。

 

まとめ

まとめいかがでしたでしょうか。

定款の変更と言っても、いろいろなルールがあって複雑だなあと感じられたかもしれません。

しかし、手続自体は非常に簡単なものですので、「定款の変更が必要なのか」「登記が必要なのか」「登録免許税はいくらになるのか」をしっかり調べて申請されれば、ご自身でも十分出来る作業だと思います。

但し、登記が必要な定款変更は間違えて再度変更となると、毎回登録免許税がかかってしまいますので、内容は慎重に変更して下さい。

 

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