不動産業の始め方を徹底解説します!

不動産業とは 起業相談・アイデア

不動産業とは

「インターネットを使ってマンションの賃貸や売買の仲介をしたり、マンションの管理をするために不動産業を始めたいんだけど、宅建士試験が難しそうだから・・・」とご相談を受けることがあるのですが、すべての不動産に関する仕事に、宅地建物取引業の免許が必要なわけではありません。

不動産業(宅地建物取引業)を始めてみたいと思われている方に、不動産業の始め方を判りやすくご説明したいと思います。

 

不動産業とは

「不動産業」と「宅地建物取引業(宅建業)」を同じと思われている方も多いようですが、同じものではありません。

不動産業とは、土地や建物の売買や媒介以外にマンションの管理や山林など宅地以外の土地を売買したり不動産にかかわる取引全般が対象になります。

一方、宅地建物取引業は宅地(建物を建てる予定の土地や用途地域内の土地も含む)と建物を売買・交換したり、売買・交換・賃貸を仲介、代理するような取引を行うことを業としている場合に限定されます。

つまり、「不動産業」の中の一部の業務が「宅建業」ということになります。

 

宅地建物取引業とは

宅地建物取引業とは「不動産業」と聞くと、どんな仕事を思い浮かべますか?

「家や土地の売買を仲介する仕事」「部屋の賃貸を仲介する仕事」などを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

これらの仕事は、確かに不動産業なのですが、その中でも「宅地建物取引業(以下、宅建業)」と呼ばれる仕事になります。

「宅建業」を開業するためには、宅地建物取引業法(以下、宅建業法)という法律で決められた要件を満たして、手続をしなければいけません。

冒頭のように、インターネットでマンションの売買や賃貸を媒介(斡旋)する場合は、宅地建物取引業になりますので、以下に述べるような手続を経なければ開業することはできません。

じつはこの「宅地建物取引業」という言葉は非常に細かく定義されていますので、一つ一つご説明したいと思います。

 

「宅地」とは

宅地とは、現在建物が建っている土地建物を建てる目的で取引される土地です。

ですから山林や農地などは宅地には該当しません。

ただし、現在は山林であっても、そこに住宅を建てる目的で取引をするような場合は「宅地」に該当しますので注意して下さい。

また、都市計画法という法律で「用途地域」と決められた地域内の土地は「宅地」になります。

用途地域内の農地で、将来も建物を建てるつもりはないという場合でも、宅建業法上では「宅地」となりますので、この点も注意が必要です。

 

「建物」とは

宅地の後で建物と聞くと、住宅用一軒家とかマンションを想像されるかもしれませんが、宅建業法上の「建物」は、一軒家やマンション以外にも、店舗や工場、倉庫など、全ての建物が該当します。

 

「取引」とは

ここは非常に重要です。

宅建業の取引は全ての不動産売買と賃貸が含まれるわけではありません。

 

自ら当事者として宅地や建物を売買または交換すること

「取引」とは自己所有の土地であっても、売買や交換する場合は宅建業の取引となります。

交換というのはA土地とB土地を交換するようなケースです。

これも宅建業の取引となりますので、宅建業免許が必要になります。

ここで、重要なのが「自ら当事者として宅地や建物を賃貸すること」は宅建業の「取引」にあたらないという点です。

例えば自己所有物件を人に貸すような場合は宅建業免許は不要です。

また、他人が所有している不動産を借りて、それをさらに別の人に貸す(転貸)場合も、「自ら当事者として賃貸する」ということになりますので、宅建業免許は不要です。

 

売買、交換または貸借を媒介すること

媒介というのは、契約の間を取り持つ「仲介」をすることです。

Aさんから部屋を借りたいと依頼をされて、Bさんの部屋を紹介して、契約を結ぶように取り持つ行為です。

「斡旋(あっせん)」も媒介と同じです。

 

売買、交換または貸借を代理すること

代理とは民法99条で以下のように定められています。

第99条(代理行為の要件及び効果)

1 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。

つまり、本人に代わって代理人が契約を結び、その契約は本人が結んだことと同じ効力があるということです。

AさんにBさんとの契約の代理を依頼されて、Bさんと契約を結ぶような行為です。

 

「業」とは

「えっ?業にまで意味があるの?」と思われるかもしれませんが、実は「業」の意味も重要ですので覚えておきましょう。

これは、宅建業に限った定義ではありませんが、「業」は「不特定多数かつ多人数に対して、反復継続して取引を行う行為」と定義されます。

 

「不特定」とは

広告で買主を募集して分譲するような場合は、「不特定」の人と取引する事になり「業」となります。

もしA社の社員に限定して、福利厚生のために分譲するような場合は、不特定にはなりません。

 

「多人数」とは

例えばAという土地を10区画にして、10人に分譲した場合は多人数との取引になり「業」となります。

1人に販売した場合は、多人数にはなりません。

 

「反復継続」とは

何度も売買の取引をする場合は反復継続した取引となります。

もし、自分の持っている土地を1回だけ売るような場合は「業」にはなりません。

ただし、自己所有の土地を例えば10区画に分割して、宅建業者がそれを代理して売買するような場合、Aも「不特定多数かつ多人数に対して、反復継続して取引を行う行為」をしていることとなり、宅建業免許が必要になりますので、注意して下さい。

 

宅地建物取引業に該当しない不動産業とは

それでは、宅建業に該当しない不動産業にはどんなものがあるのかもみてみましょう。

これらの業務のみ行う場合は、後述します宅地建物取引士の設置は義務付けられていませんので、免許が無くても営業をすることができます。

 

自己所有物件の賃貸

「宅地建物取引業」のところでご説明しましたように、自己所有物件の賃貸は「自ら当事者として宅地や建物を賃貸する場合」に該当しますので宅建業には該当しません。

この場合は宅建業の免許はなく営業することができます。

 

転貸物件の賃貸

他人から不動産を借りて、借りた物件をさらに別の人に貸すことを「転貸」といいます。

転貸の場合も、「自ら当事者として宅地や建物を賃貸する場合」に該当しますので宅建業には該当しません。

これも宅建業の免許はなく営業することができます。

ただし、転貸を行う場合は賃貸人(貸主)の許可が必要になると民法で定められていますので、ご注意下さい。

民法 第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)

賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる

 

不動産管理業

不動産管理業賃料の徴収等、契約更新、賃貸条件の改定、解約業務、入居者管理、入退去立会い、賃料不払い者への督促、苦情処理、鍵の保管、緊急時応急措置、清掃・除草、建物・設備の管理などの不動産管理業と呼ばれる業務は宅建業には該当しません。

これらの業務は宅建業免許は不要です。

但し、業務内容によっては宅建業免許以外の免許が必要になる場合もありますので、ご注意下さい。

 

不動産コンサルタント業

不動産の売買、交換または賃貸の仲介、代理のような宅建業に該当する行為はできませんが、物件の探し方のアドバイスなどのコンサルタント業は宅建業の免許は不要です。

但し、コンサルティングの内容によっては宅建業免許以外の免許が必要になる場合もありますので、ご注意下さい。

 

宅地建物取引業を始めるための条件

宅地建物取引業を始めるには、まず免許の申請をしなければなりません。

免許が無事取得できても、すぐに開業できるわけではなく、営業保証金(又は弁済業務分担金)という法律で決められた金額を供託しなければなりません。

それでは、その条件を一つづつ見ていくことにしましょう。

 

【条件1】宅地建物取引士の設置

宅地建物取引士の設置宅建業を始めるには、その事務所に「宅地建物取引士(宅建士)」の設置が義務付けられています。

冒頭で書きましたように、宅建業を始める為に、社長が宅建士にならなければいけないという事はありません。

法律で決められた人数の宅建士を従業員として雇うことで開業することが出来るのです。

 

宅地建物取引士とは

宅地建物取引士とは、以下の3つの条件を満たした者を言います。

宅建業の取引に当たっての注意事項などをお客さんに説明する役割があります。

  • 宅地建物取引士資格試験に合格した者
  • 宅地建物取引士の登録を受けた者
  • 宅地建物取引士証の交付を受けた者

つまり、宅建試験に合格しただけでは、宅地建物取引士になったとは言えないのです。

 

成年・専任とは

事務所に設置する宅建士は「成年」かつ「専任」であることが条件とされています。

「成年」とは、20歳以上の人に加えて、20歳未満であっても結婚している人も成人扱いとなります。

「専任」とは常勤であること、つまり週に数日しかこないような非常勤の方はたとえ宅建士であっても、設置を義務付けられている宅建士としての条件を満たすことは出来ません。

 

設置人数

事務所ごとに、宅建業務に従事する者5名に対して1名以上の割合で、成年である専任の宅建士を設置しなければなりません。

例えば、1つの事務所で、宅建業務に従事する6人の従業員がいる場合は、2人以上の宅建士を設置しなければなりません。

もし開業後に宅建士の退職などで、免許基準の宅建士の人数を下回った場合は、2週間以内に補充などの必要な措置をとる必要があります。

 

【条件2】宅地建物取引業免許の取得

宅建業を始めるためには、専任の宅建士の免許とは別に法人(又は個人事業主)としての宅建業免許も必要になります。

 

免許の申請先

宅地建物取引業(宅建業)の免許は、都道府県知事又は国土交通大臣によって与えられます。

宅建の免許は事務所の設置場所によって免許権者(免許を与える権限を持つ機関)がことなります。

1つの都道府県内に事務所を設置する場合は、都道府県知事に申請します。

例えば、大阪府内に5つの事務所を作る場合は、大阪府知事に申請します。

2つ以上の都道府県に事務所を設置する場合は、国土交通大臣に申請します。

但し、国土交通大臣への申請は、主たる事務所(本店)のある都道府県知事経由で申請しますので、結局申請を出す窓口は、どちらの場合も、都道府県庁の宅地建物取引業担当課になります。

 

免許の基準

免許を申請するにあたって、いくつかの条件にあてはまる人は申請することが出来ないとされています。

かなり細かく決められていますので、全てを書きだすことはしませんが、以下簡単に挙げさせて頂きます。

  • 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者
  • 禁固刑以上の刑又は特定の罪状の罰金刑に処せられて5年を経過していない者
  • 暴力団員又は暴力団員でなくなってから5年を経過していない者
  • 特定の事由で免許取消となって5年を経過していない者
  • 免許申請に虚偽の記載があるもの
  • その他、宅建業法で定められた事由

文面だけだと判り難い条件もあるのですが、過去に犯罪を犯したり、宅建業免許の取り消しをされた会社の役員だったというような場合は注意が必要です。

 

免許の有効期間

宅建免許は日本全国で有効で、有効期間は5年になります。

免許を更新する場合は、免許の有効期間満了日の90日前から30日前までの間に更新を行わなければなりません。

 

【条件3】保証金の供託

保証金とは、宅建業者がお客さんに損害を与えてしまった場合に、金銭的な補償をするために、供託所に供託する一定の金額の金のことを言います。

この保証金には「営業保証金」と「弁済業務保証金」という2種類あり、どちらか一方を供託する必要があります。

 

営業保証金

営業保証金宅建業者が、主たる営業所の最寄りの供託所に供託します。

支店がある場合でも主たる営業所の最寄りの供託所に全額を供託します。

金額は主たる営業所につき1000万円、その他の事務所は1つの事務所につき500万円を供託します。

例えば本店と3つの支店を作る場合は1000万円+500万円×3店舗で2500万円の営業保証金を供託しなければなりません。

営業保証金は免許取得後に供託しますが、免許権者(都道府県知事又は国土交通大臣)に供託した旨の届け出をしなければ、事業を開始する事が出来ません。

 

弁済業務保証金

営業保証金は、かなりの高額のため、少ない金額で宅建業を開業できるような仕組もあります。

それが「弁済業務保証金」というものです。

この制度は保証協会という組織に加入しなければ適用出来ないのですが、加入した場合は主たる営業所につき60万円、その他の事務所は1つの事務所につき30万円と、営業保証金と比べると非常に少ない金額で宅建業が開業できるというメリットがあります。

 

開業後にしなければいけない事

事務所には以下の事項を備えるように決められています。

 

標識の掲示

事務所ごとに、見やすい場所に「標識」を掲示しなければなりません。

「標識」というと道路標識を思い浮かべるかもしれませんが、ここでいう「標識」は「宅地建物取引業者票」というもので、免許証番号や免許有効期限など法で定められた事項を記した標識です。

 

報酬額の提示

事務所ごとに、見やすい場所に「報酬額」を掲示しなければなりません。

宅建業法では、宅建業者の報酬額の上限を設定しているのですが、一般のお客さんにはそういった制限を知っている人は少ないので、上限以上の報酬を宅建業者が請求するようなことがないように、見やすい場所に報酬額を掲示することが義務付けられています。

 

帳簿の備え付け

事務所ごとに業務に関する帳簿を備えなければなりません。

取引毎に、取引日、物件の所在地や面積などの記載が必要です。帳簿は一定の条件を満たせばパソコンに記録したものでも良いとされています。

帳簿は各事業年度末に閉鎖し、閉鎖後5年間の保存義務があります。

 

従業員名簿の備え付け

事務所ごとに従業者名簿を備えなければなりません。

取引関係者から請求された場合は、従業員名簿を閲覧させる義務があります。

従業員名簿も一定の条件を満たせばパソコンに記録したものでも良いとされています。

従業員名簿は最後の記載をしてから、10年間の保存義務があります。

 

まとめ

まとめいかがでしたでしょうか。

一口に「不動産業」といっても、宅建業の免許が必要なケースと不要なケースがあるということがご理解頂けたかと思います。

特に宅建業に該当するような不動産の売買や賃貸は、一般の消費者にとって経験する機会は決して多く無いので、不動産取引には不慣れな面があります。

反面、宅建業者は不動産取引を生業としているので、消費者を騙してたくさんお金を取ろうと思えば、出来てしまう危険もあります。

そういった消費者を保護する観点から、宅建業法では宅建業者にさまざまな制約や義務を課しています。

金額の大きい取引が多い宅建業ですので、後々にトラブルにならないように、最初にきちんと宅建業法をご理解されて、開業されることをおすすめします。

 

 

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