「非営利だったら給料はどうなるの?」誤解されがちなNPO法人の制度のメリットとデメリット

[記事公開日]2015/12/05
[最終更新日]2016/11/05
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NPO法人とは

「NPO法人ってボランティア?」「非営利の法人だったら、働いている人の生活費はどうなるの?」などなど、NPO法人と聞くとなんとなくボランティアを思い浮かべる人も多いと思います。

NPO法人でも株式会社と同じように利益を出して、職員に給料を支払います。

株式会社と同じで利益も出せて、自分の給料も出せるんだったら、なんとなく公共のためにやっているというイメージの良い「NPO法人」で起業しようかな、なんて思うと後で大変な後悔をする可能性があります。

今回は誤解の多い「NPO法人」について制度のメリットとデメリットを判りやすくご説明したいと思います。

 

NPO法人とは

NPO法人の概念

NPO法人とは、1998年12月に施行された日本の特定非営利活動促進法に基づいて特定非営利活動を行うことを主たる目的とし、設立された特定非営利活動法人の事をいいます。NPO法人は、「民間で、公益に資するサービスを提供する非営利団体」と定義できます。

 

ボランティアと、どう違うの?

ボランティアとは組織(法人)ではなく、個人個人が集まって原則「無償」で行う活動です。

それに対して「非営利団体」のNPO法人は活動により収益をあげて、そこから職員の給料などの経費を引いて残った分は利益とすることができる法人組織です。

ボランティア活動は基本的には「無償」、NPO法人の活動は「収益をあげてもよい」ということになります。

 

非営利団体なのに利益を出してもいいの?

OK

「非営利」というのは「利益をあげてはいけない」という意味ではないのです。

「利益を分配してはいけない」という意味なのです。

「非営利」ということは、収益をあげることに制限をかけるものではなく、収益の使い方(分配は出来ず、活動費に充てる)に制限をかけるものなのです。

株式会社の場合、株主に配当というかたちで利益を分配しますが、NPO法人の場合は利益が出ても会員や寄付者へ分配することが出来ません。

NPO法人が出した利益は翌年以降の活動費などにあてなければなりません。

つまり、利益が出ても活動費としてしか使う事ができないのです。

 

利益が出せるんだったら株式会社と大きく変わらない?

「分配ができない」という点で、あまりピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。

「給料がもらえるんだったら、別に分配なんてしなくてもいいかなあ・・・。なんとかく聞こえもいいし、株式会社じゃなくてNPO法人で起業しようかな」と思われるかもしれません。

しかし、この「利益が分配できない」という点は非常に大きな意味を持っています。

例えば、将来、法人が大きくなってご自分の子供達に事業を継がせたい、というようなお考えがある場合は特に要注意です。

株式会社では会社が解散することになった場合、残余財産(法人が解散の清算手続き終了後に残った財産)は株主が出資比率に応じて分配される権利があるのですが、NPO法人の場合は、国・地方公共団体、他のNPO法人、学校法人、財団法人などに譲渡しなければなりません。

活動をする為に出した利益ですから、活動をしなくなった場合は別のNPOや国にその利益を譲渡しなければいけない、ということになるのです。

つまり、株式会社は「利益をあげるために活動」をしますが、NPOは「活動をするために利益をあげる」と言えると思います。

「活動をするための利益」なので、分配することは出来ず、活動費にのみ充てることができ、解散する場合は、別の公共に資するサービスを提供するところへ残った利益を譲渡しなければいけないのです。

このように考えると、株式会社とNPO法人が全く異なるものだとおわかり頂けると思います。

 

NPO法人のメリット

任意団体からNPO法人になる場合は、株式会社や合同会社と同様に社会的信用が出る点や、団体名で契約・登記ができると言った法人としてのメリットがありますが、同じ法人である「株式会社」と比べてどんなメリットがあるのでしょうか。

 

公的なイメージ

NPO法人は「公益に資するサービス」を提供しますので、「株式会社です」と言われた場合よりも「NPO法人です」と言った方が、「儲けが目的ではなく、公益のために頑張っているんだろうなあ」というイメージをもたれやすいでしょう。

そういった公益に資するサービスを提供する場合は、相手に理解されやすくなる可能性がある、というメリットがあります。

 

設立費用

NPO法人の設立費用は0円です。(実印を作ったり、役所に提出する住民票などの書類は実費がかかります)

株式会社でかかる登録免許税(15万円)や定款認証手数料(5万円)もかかりません。資本金がなくても出来ます。

つまり、自分で全部やってしまえばほとんどタダで出来てしまうのです。

 

NPO法人のデメリット

社員(正会員)の入会制限が困難

NGこれをデメリットと呼ぶのかは難しいところですが、「株式会社もNPO法人もたいしてかわらないだろう」というような軽い気持ちでNPO法人を設立た後でこの事実を知って、「え?そうなの!?」という事にもなりかねないので、一応デメリットとしてあげさせて頂きます。

NPO法人は原則として、その目的に賛同する人の参加に制限をかけることは出来ません

入会条件は「目的に賛同する事」だけなのです。

理事長が「あの人、あんまり気が合わなさそうだから採用はやめておこう」と言っても、入会を断ることは出来ないのです。

「正当な理由があれば入会を制限出来る」ともされていますが、そもそも「目的に賛同します」と言っている人に対して、「いやいや、それはウソでしょう。あなたが私達の目的に賛同しているとは思えませんよ」という正当な理由を示すことは事実上ほぼ不可能です。

裁判で争って、入会拒否が認められたという判例が平成25年に熊本地裁であるそうですが、裁判で争われるくらい入会拒否は簡単に出来ないということなのです。

入会した社員は出資額に関係無く、一議決権を持ちます

どんどん知らない人が入って来て、自分が思っているように組織を運営出来なくなるという可能性もゼロではありません。

この点もNPO法人の公共の性格が強く出ていると思います。

 

社員(正会員)が10人以上必要

前述しました通り、NPO法人社員は「目的に賛同して入会した人」です。

株式会社や合同会社は1人でも出来ますが、NPO法人は設立に10人以上の社員と、その内3人以上の理事と1人以上の監事が必要です。

こういった設立条件も、株式会社や合同会社に比べて煩雑という意味でデメリットと言えると思います。

 

設立に時間がかかる

NPO法人は必要書類を所轄庁に提出し、受理されると2ヶ月間、一般の人に縦覧されます。

その後、所轄庁の審査が行われます。

一般的には書類が受理されてから、3ヶ月~4ヶ月程で認証又は不認証の決定がされます。

株式会社や合同会社は早ければ1週間から10日で終わることを考えると、設立に時間がかかることもデメリットの一つになります。

 

まとめ

まとめいかがでしたでしょうか?

NPO法人も株式会社のように給料は出せますし、収益をあげる事も出来るのですが、決定的に違う点は、株式会社は「収益をあげるために活動する」という組織であり、NPO法人は「活動するために収益をあげる」組織という点です。

株式会社は「収益のための活動」ですから、当然収益を分配します。

一方NPO法人は「活動のための収益」ですから、活動維持のために収益を使います。社員や寄付者に分配することは出来ないのです。

株式会社と違い「公共のためになる活動を、同じ思いをもつ仲間(目的に賛同する者)と一緒にやっていきたい!」という志を持たれる方には非常に向いている制度だと言えます。ご自身が何をしたいのかをじっくり考えた上で、どういった形態の法人を設立するかを決められると良いと思います。

 

 

 

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1970年生まれ 千葉県木更津市出身 早稲田大学政治経済学部卒 2015年現在、行政書士事務所以外に2つの株式会社を経営する起業家でもある。スモールビジネスで起業する人へのサポートを得意とする。 2009年 某大手電機メーカー退社 2009年 旅行会社の株式会社旅晴好(ろはす)設立 2015年 WEB制作会社 株式会社リヒトス設立 2015年 よこぜき行政書士事務所開設