法人成りした個人事業主が「え?何これ!」と感じる法人経理の難しいポイント

[記事公開日]2015/12/04
[最終更新日]2016/02/07
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法人経理の難しいポイント

「個人事業主の時に、いろいろ大変だったけど自分で確定申告していたので、法人になっても自分でします」「青色申告でしょ?個人事業主の頃もしていましたよ。ソフトで簡単に出来ますから、法人になっても自分で申告しますよ」と言われる方はかなりの数いらっしゃいます。

最近はfreeeやMFクラウドのようにクレジットカードや銀行口座を登録して、かなりの部分を自動化して、個人事業主の確定申告も以前に比べると格段に楽になってきたと言えると思います。

また、確定申告時期には、個人事業主の方向けに、地域の税理士が確定申告をサポートしてくれるという行政サポートがあるところも多いので、そういったサービスを利用して申告されている個人事業主の方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、法人も個人事業主も青色申告には違いないのですが、法人と個人事業主とでは日々の会計管理や申告内容が異なる部分も多いのです。今回は、個人事業主の方が法人成りされた場合に、覚えておいた方が良い「法人と個人事業主の違い」を税制面や会計面からご紹介したいと思います。

 

法人と個人事業主の違い

法人と個人事業主との違いはたくさんあるのですが、法人成りした場合に、今までと大きく異なる考え方がありますので、まずはそれをご紹介したいと思います。

 

資金に対する考え

資金に対する考え個人事業の場合、事業資金と事業主の個人的なお金を区分する必要はありませんので、事業用のお金を個人用の支出に使用したような場合は、すべて「事業主貸し」という勘定科目で処理します。個人用のお金から事業用の支出をしたような場合は、「事業主借り」で処理します。この勘定科目は非常に便利ですよね。

しかし法人にはこの「事業主貸し」や「事業主借り」という勘定科目はありません。

法人成りされたばかりの方の場合、「資本金も自分が全部お金出してるのに、なんで自由に出来ないの?」と、頭ではご理解されていても、「法人の財産と事業主個人の財産は全く別」という概念に慣れるのに時間がかかるケースもあります。

ちなみに、法人の場合、会社のお金を社長個人の支出に使用したような場合は、「貸付金」「仮払金」「立替金」など、どのような目的で移動されたお金なのかを、しっかり管理して記帳する必要があります。

こういった仕訳作業を適当にしてしまうと、最後の決算の内容を大きく左右してしまいますので、十分注意して下さい。

 

給料に対する考え

個人事業主は「売上-仕入-経費」が全て自分の所得になるので、毎月の給料という概念がありません。

法人の場合は例え一人社長であっても給料が発生します。「当面、赤字だから給料はゼロにしよう」としたとしても、給料は0円ということで、給料が無くなるわけではありません。

給料は後述しますように、社会保険や源泉所得税を納税する為に、毎月計算をしなければいけません。個人事業主の時は、年1回確定申告をして終わりだったのが、法人の場合は例え一人社長でも毎月の「給料」を計算しなければならないという点が大きな違いになります。

 

毎月の管理で個人事業主と異なる点

「給料に対する考え」でも書きました通り、「個人事業主の時にはしなくてもよかったのに、法人になると毎月しなければならない作業」が出てきます。細かい違いはたくさんあるのですが、主に以下の2点が法人成りして、「これは、面倒だなあ・・・」と思われる事が多い作業です。

 

社会保険料の計算

計算法人成りした場合、社会保険の加入が強制になります。社会保険とは「厚生年金」「健康保険」「介護保険」の3つを指します。(「雇用保険」「労災保険」は個人事業主も法人も同じく従業員に対して加入義務がありますので、この点は法人成りしても変わりません)

個人事業主の時は国民年金なので定額でしたが、法人の場合は厚生年金になります。厚生年金は、給料によって保険料が変わってきますので、それを計算しなければなりません。

個人事業主の時は国民年金も国民健康保険も引き落とし手続をしていて、年金も健康保険も計算をした事が無いという方もいらっしゃるかもしれませんが、法人になった場合、社長や従業員に支払う給料から社会保険を引いて、さらに、以下で述べます「源泉所得税」を計算しなければなりません。

しかも厚生年金は平成16年の制度の改正により、厚生年金保険料の保険料率は、平成29年まで毎年9月に0.354%ずつ引き上げらます。つまり毎年変更された料率で計算をしなければいけないのです。

この社会保険の計算だけでも、面倒になって給料計算をアウトソーシングされる方もいらっしゃいます。

 

源泉所得税

本来、所得税は労働者全員が確定申告をして納税すればいいのですが、そんなにたくさんの人が一斉に確定申告されても税務署がパンクしてしまいますので、前もって「納税予定の所得税額」を給料から引いて国に納めてしまう制度になっています。これを源泉所得税といいます。

事前に徴収する「納税予定額」を決める為には、そもそも、所得税の対象となる所得がいくらになるのかを計算しなければいけません。

所得税の対象となる所得を計算するには、まず、社会保険料を計算し、給料からその社会保険料を差し引きます。差し引いた額に対して、納税予定の所得税額(源泉所得税)を算出します。これは源泉徴収税額表で調べる事が出来ます。

注意点として、この税額も額の改正がされる場合があるので、気をつけておかなければいけません。

さらに毎月の給料と賞与(ボーナス)の場合は計算方法が異なりますので、その点も注意が必要です。

実際の年間の所得が確定した時に、実際に納めるべき所得税も確定します。この確定した所得税額と源泉所得税の差額を、「年末調整」と呼ばれる作業で調整します。

 

決算申告で個人事業主と異なる点

個人事業主であっても青色申告をされている方は多いと思います。「法人も青色申告だったら、今までと同じようなものだろう」と思われる方もいらっしゃいますが、難易度は遥かに法人の申告の方が高くなります。

では、どういった点で難易度が高いのかを見ていきたいと思います。

 

「利益」と「所得」の概念

「利益」と「所得」の概念個人事業の場合は「収益-費用=利益」で「利益≒(又は=)所得」なので、会計ソフトに入力した結果で申告が出来るのですが、法人の場合「法人税」という法律に従って課税対象となる所得を算出しますので「利益≠所得」なのです。

法人の場合は会計上の「利益」と、法人税法でいうところの「所得」が異なるため、法人税法のルールに従って「所得」を算出し、申告しなければならないのです。

つまり個人事業主には関係の無かった「法人税法」という法律に従って申告しなければならない、という点が個人事業主の確定申告と法人の決算申告の大きな違いだと言えます。

例えば、個人事業主の場合は、会計ソフトに日々のお金の動きを入力して自動的に計算される「利益」を「課税所得」として申告します。(実際には若干異なる場合もあります。)収益2000万円から費用が1000万かかった場合、利益が1000万円になりますので、ここに税金がかかります。

これに対して、法人の場合、会計ソフトで計算された「利益」を法人税法のルール(益金・損金)に則って「所得」を計算します。

法人の場合、先程の個人事業主と同じように利益が1000万円だったとしても、会計上費用であっても損金と認められないもの(役員賞与等)は利益にその損金がプラスされます。例えば会計上の利益が1000万円だったとしても、役員賞与が200万円あった場合は、課税対象となる所得は1200万円になります。

このように、どういった費用が損金や益金として認められるのか、認められないのかを理解していないと申告の為の所得計算が出来ないのです。

さらに、法人税は、税額や税率の改正もありますし、期限付きで特例が出されることもあります。こういった法人税の変更や特例をチェックしていないと、間違った申告をしてしまったり、適用出来た税制優遇を知らずに損をしてしまったということもあり得るのです。

この「法人税の理解」が、ご自身で法人の申告をする場合の非常に高いハードルになります。

 

別表の作成

法人の申告は上述しました通り、財務会計でいう「利益」から税務会計でいう「所得」を計算しなければいけません。どのようにして所得を計算したかを報告する為に、申告書と一緒にその計算根拠となる別表を作成しなければなりません。(課税所得の計算は別表四で行います)

課税所得の計算以外に、同族会社の判定に関する明細(別表二)、租税公課に関する明細(別表五)、交際費等の損金算入に関する明細(別表十五)なども通常作成が必要になります。

こういった書類作成の作業も知識が必要になるので、ご自身で申告をするのは難しいと思います。

 

仕訳・記帳の重要性

仕訳・記帳の重要性所得の計算や給与計算など見てきたのですが、ここで一つ重要な注意点があります。

それは「仕訳が正確に出来ている」ということが大前提という事です。どんなに複雑なものでも、決算申告は、突き詰めれば、一つ一つのお金の流れの積み重ねをまとめたものです。つまり、「一つ一つのお金の動きがどういった理由で動いたものか(仕訳)」さえ正確に記してさえいれば正しい申告が出来るのです。

逆に言いますと、仕訳を間違って積み重ねてしまうと、根本が間違っているので、どんなに苦労して計算しても、間違った申告をすることになります。

個人事業主の時には「事業主貸し」で事業用のお金を個人で支出していたのですが、法人では「貸付金」「仮払金」「立替金」のどれに当たるかで申告内容が変わってくることがありますので、どのような理由でお金が動いたかをきちんと把握して記録(仕訳)しておく必要があります

もちろん個人事業主でもきちんと仕訳して記帳することは重要なのですが、法人の場合はさらに細かい知識を持って仕訳・記帳をしなければなりません。

 

まとめ

まとめいかがでしたでしょうか?

今回の記事をお読みいただいて、個人事業主の時にされた青色申告よりも法人の申告の方が遥かに難易度が高いということをご理解いただけたかと思います。

特に源泉所得税や社会保険といった給料計算や決算申告は個人事業主とは大きく異なる点ですので十分お気を付け下さい。

そして、この申告に最も重要なことは、日々のお金の動きの記録(記帳)です。どういった目的でどこにお金が動いたかの記録を間違えてしまうと、当然申告内容も事実と異なる内容になってしまいますので、注意しましょう。

法人を設立されて申告や記帳で疑問をお持ちの方やお困りの方もいらっしゃるかと思いますので、その場合はお気軽にお問い合わせ下さい。

 

 

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1970年生まれ 千葉県木更津市出身 早稲田大学政治経済学部卒 2015年現在、行政書士事務所以外に2つの株式会社を経営する起業家でもある。スモールビジネスで起業する人へのサポートを得意とする。 2009年 某大手電機メーカー退社 2009年 旅行会社の株式会社旅晴好(ろはす)設立 2015年 WEB制作会社 株式会社リヒトス設立 2015年 よこぜき行政書士事務所開設