「非営利だったら給料はどうなるの?」NPO法人を詳しく解説します

はじめに

NPO(特定非営利活動法人)と聞くと、「ボランティア活動」や「無給で働く場所」といったイメージを持つ方が少なくありません。

実際に、非営利活動法人であることで、スタッフが無給ボランティアであるという誤解が生じているのも事実です。

この認識は、NPOへの参加を検討している方や、その活動を支援したいと考えている方にとって、大きな障壁となり得ます。  

しかし、この認識はNPOの「非営利」という言葉が持つ、ある種の「言葉の罠」に起因するものです。

NPOの「非営利」とは、株式会社のように「金銭的な利益を得る目的で活動すること(営業すること)」ではない、という意味であり、組織が得た利益を「組織のメンバーなどで分け合うことが禁止されている」ことを指します。

これは、利益を個人の懐に入れるのではなく、団体の社会貢献活動のために再投資することを意味します。  

重要なのは、NPOは無収入で活動するわけではありません

お金がないと事業は長続きしません。

そのため、収益事業を行うことは認められています」という点です。

つまり、利益の「再分配」が禁止されているだけであり、労働の対価としての給与支払いは法律で認められています

NPOは、社会貢献という目的を達成するために、経済的な基盤を確立し、持続可能な運営を行う専門的な組織として機能しています。

このような組織は、一時的な慈善活動ではなく、長期的な社会課題の解決を目指す上で、安定した財源と人的資源が不可欠となるからです。  

本記事では、この「非営利」という言葉の真の意味を明らかにし、NPO法人がどのように給料を支払い、どのようなメリットとデメリットがあるのかを詳しく解説していきます。

これにより、NPO法人制度への理解を深め、その社会的な役割と可能性を正しく認識する一助となることを目指します。

本記事は対話形式の音声データでもご紹介していますので、是非あわせてご視聴ください。

NPO法人とは

NPO法人という言葉は聞いた事があるけれど、詳しくは知らないという方も多いと思います。

まずはNPO法人とはどのようなものなのかをご説明します。

NPOとNPO法人の定義と役割

NPOとは「Non Profit Organization (非営利組織)」の略語で、「営利を目的としない」かつ「社会貢献活動を行う民間団体」の総称です。

これは組織の概念であり、個人の自発的な活動を指す「ボランティア」とは明確に区別されます。  

NPO法(特定非営利活動促進法)は、1998年12月に施行されました。この法律が生まれた背景には、1995年の阪神・淡路大震災において、市民による自発的な救援活動が大きな力を発揮した一方で、その活動を継続・発展させるための法的基盤が不足していたという経験があります。

NPO法は、市民が行う福祉、環境、まちづくり等さまざまな分野の社会貢献活動の健全な発展を促進することを目的としています。  

この法律に基づいて法人格を取得したNPO団体が「NPO法人」(正式名称:特定非営利活動法人)です。

法人格を持つことで、団体としての法的地位が確立され、より安定した活動基盤と高い社会的な信頼性を得ることができます。

これは、単なる任意団体では難しい、大規模かつ継続的な社会貢献活動を展開するための重要なステップとなります。  

「非営利」が意味するもの

NPOの「非営利」という言葉は、しばしば「無収入」や「無償」と混同されがちですが、その真の意味は異なります。

NPOの「非営利」とは、株式会社のように金銭的な利益を得る目的で活動すること(営業すること)ではない、という意味です。

具体的には、組織が得た利益を、その構成員(社員や役員、出資者など)に分配しないことを指します。  

しかし、これは「無収入」を意味するものではありません。

NPO法人も事業を継続し、社会貢献という目的を達成するためには資金が必要です。

そのため、収益事業を行うことは認められています

例えば、物品販売やサービスの提供、イベントの開催など、多様な方法で収入を得ることが可能です。  

最も重要な点は、収益事業で得た利益を組織のメンバーなどで分け合うことが禁止されていることです。

得た利益はすべて、引続き事業のために使用しなければいけません。

さらに、特定非営利活動以外の「その他の事業」で利益が生じた場合も、その利益は特定非営利活動のために使用することが義務付けられており、会計も厳格に区分して経理する必要があります。

これは、NPO法人が社会貢献という本来の目的から逸脱せず、得た収益を再び社会のために還元するという原則を徹底するための仕組みです。  

NPO法人が主たる目的とする「特定非営利活動」は、NPO法に定められた20分野の活動に限定され、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを目的とするものです。

この制度は、NPOが単なる慈善団体ではなく、事業活動を通じて自律的に資金を確保し、社会的なインパクトを最大化するための「ビジネスモデル」を構築できる可能性を示しています。  

ボランティア活動との明確な違い

NPOとボランティアは混同されやすい言葉ですが、両者には明確な違いがあります。

ボランティアは一般的に個人が無償(またはそれに近い報酬)で自発的に活動することを指します。

個人の善意や自発性が活動の原動力となる点が特徴です。  

一方、NPOは「継続的な活動を行う組織(団体)」を指し、その事業に関して対価を得る場合もあります。

ボランティア活動を行う有志の集まりが、さらに発展して会則を定め、役員会や代表者を置くことで、メンバーが入れ替わっても組織の同一性が保たれ、継続的に活動を続けられる体制が整った場合、その団体は「NPO団体」であると言えます。

NPO法人は、そのNPO団体がさらに法的実体を持ったものです。  

この区別は、NPO法人制度の理解において非常に重要です。

多くの人々が「NPO」という言葉を耳にしたとき、具体的な法人格を持たない任意団体や個人のボランティア活動を想像しがちです。

しかし、NPO法人という法的実体を持つことは、組織がより厳格なルールに基づき、継続的かつ安定的に活動を行うための戦略的な選択を意味します。

法人格の取得は、組織の信頼性や活動規模を大きく左右するため、単なる「非営利活動」から「法人としての活動」へと移行する際に、そのメリットとデメリットを慎重に検討する必要があります。

NPO法人の「給料」

「NPO法人は非営利なので給料はもらえないのでは?」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

NPO法人であっても人を雇用して給料を支払うことは可能ですが、一般的な営利企業と異なる点もありますので、その点を分かりやすくご説明したいと思います。

NPO法人における雇用と給与支払いの原則

「非営利」という言葉が誤解を生みやすい一方で、NPO法人は人を雇用して給料を支払うことが可能です

これは、NPO法人が利益の再分配を禁じられているだけであり、組織運営に必要な人件費を支出することは、その目的達成のために不可欠な経費として認められているからです。  

NPO法人がスタッフを雇用する場合、一般的な企業と同様に、労働基準法に則った対応が求められます。

これには、最低賃金以上の給与支払い、法定労働時間の遵守、残業代の支払い、有給休暇の付与、そして雇用契約書の締結が含まれます。

また、スタッフを10名以上雇用するNPO法人では、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る義務も発生します。

所得税や住民税などの税金、社会保険の適用も、一般企業の会社員と同様に行われます。

これは、NPO法人が単なるボランティア集団ではなく、法的な責任を伴うプロフェッショナルな組織として運営されていることを示しています。  

給与の財源

NPO法人の給料は、多様な財源から支払われます。

主な収入源としては、寄付、収益事業収入(物品販売やサービス提供など)、会費、国や地方公共団体からの補助金・助成金、行政からの委託事業の対価などが挙げられます。

これらの収入を組み合わせることで、NPO法人は安定した運営基盤を築き、スタッフへの給与支払いを継続しています。  

特に、NPO法人の中でも「認定NPO法人」や「特例認定NPO法人」になると、寄付からの収入割合が増加する傾向にあります。

これは、これらの法人への寄付が税制優遇の対象となるため、個人や企業からの寄付を呼び込みやすくなるためです。

収入源の多様化は、特定の資金源への過度な依存を避け、組織の財務的な安定性を高める上で極めて重要です。

これにより、スタッフの雇用もより安定し、長期的な活動計画を立てやすくなります。  

以下に、NPO法人の主な収入源の割合を示します。

NPO法人の主な収入源の割合

収入源の内訳認証NPO法人認定・特例認定法人
会員からの会費23.7%13.5%
行政からの委託費・指定管理料20.0%20.0%
行政からの補助金・助成金19.1%14.3%
利用料(物品販売等含む)14.5%12.4%
個人・民間企業からの寄付6.1%25.3%
個人・民間企業からの補助金・助成金3.6%5.2%
企業からの委託費2.7%1.6%
その他10.1%7.7%

出典:内閣府「令和3年度特定非営利活動法人に関する実態調査」より作成

この表から、NPO法人の財源が単に寄付に依存しているわけではなく、事業収入や行政からの委託費など、多様な経路から得られていることが分かります。

特に、認定・特例認定法人では個人・民間企業からの寄付の割合が大幅に増加しており、税制優遇が資金調達に与える影響の大きさが示されています。

NPO法人における「役員報酬」と「給与」の違い

NPO法人における報酬には、「労働の対価としての給料」と「役職に対する役員報酬」の2種類があります。

この区別は、NPOの非営利性を担保し、税務上の公平性を保つ上で非常に重要です。  

役員報酬は、理事や監事などの役職を持つ人に支払われる報酬であり、その役職に対する対価とされます。

しかし、NPO法人では、利益の私的分配を防ぐため、報酬を受け取れる役員の数は、すべての役員のうち3分の1以下にする必要があります

これは、NPO法人の非営利性を維持するための厳格な要件の一つです。  

一方で、役員であっても、職員を兼務し、その労働の対価として「役員給与」を受け取ることは可能です。

この場合、役員給与は労働の対価であるため、役員報酬の3分の1制限とは別に扱われます。

ただし、監事は組織の業務執行を監査する独立した立場であるため、職員と兼務することはできません。  

税務上、役員の給与支払いには注意が必要です。

原則として、役員への給与は「定期同額給与」または「事前確定届出給与」でなければ損金として認められない場合があります。

しかし、「使用人兼務役員」という例外制度も存在します。これは、役員でありながら職員としての職務に従事する者に対し、その職員としての労働の対価として支払われる給与については、勤務日数や出来高に応じて変動しても経費として認められる制度です。

ただし、「代表」・「副」・「専務」・「常任」などの肩書を持つ役員は、使用人兼務役員にはなれません。

このような複雑な規定は、NPO法人が非営利性を保ちつつ、組織運営に必要な人材を適切に評価・報酬するための工夫が凝らされていることを示しています。  

NPO法人の給与水準の現状と実態

NPO法人における給与水準は、一般企業と比較して異なる傾向が見られます。

内閣府の「令和3年度特定非営利活動法人に関する実態調査」によると、NPO法人の有給職員の年間給与の中央値は認証法人で118.8万円、認定・特例認定法人で600万円です。

この数値は、一般の企業のように役員になれば給料が大幅に上がるというより、社会貢献のために働くという印象が強くあります。  

これは、NPOで働く多くの人々が、金銭的な報酬だけでなく、社会貢献への強い意欲やミッションへの共感を重視していることの一面を示唆していると思います。

NPO法人の職員の給与水準は、各団体が定める人事考課の給与テーブルに基づいて決定され、プロジェクトリーダーや専門職など、ポストによって給料が異なる点は一般企業と大きな違いはありません。  

この給与水準の傾向は、NPOが優秀な人材を確保する上での課題となることもあります。

特に、専門性の高いスキルを持つ人材は、民間企業でより高い報酬を得られる可能性があるため、NPOは金銭的報酬以外の魅力を戦略的に提供する必要があります。

これには、やりがいのある仕事、柔軟な働き方、組織への貢献度が高いことによる充足感、そして社会的なインパクトを直接感じられる機会などが含まれます。

NPOの給与事情は、単なる金額の問題ではなく、組織の価値観、ミッション、そして人材戦略が複合的に絡み合う複雑な状況を反映していると言えるでしょう。

NPO法人設立のメリット

NPO法人格を取得することは、単なる手続き以上の意味を持ち、社会貢献活動をより効果的かつ持続的に展開するための強固な基盤を築くことにつながります。

【メリット1】社会的信頼性の向上

NPO法人格を取得することで、営利目的でない団体として社会的に認められ、社会的信頼性が高まります

これは、NPO法人が厳格な設立要件を満たし、所轄庁(都道府県や市町村など)による監督を受けるためです。

このような公的な認証と監督は、団体が透明性をもって活動していることの証となり、一般市民、企業、行政からの信用を大きく向上させます。  

この信頼性の向上は、活動の幅を広げる上で非常に重要です。

例えば、事務所の賃貸契約、インターネット回線の契約、銀行口座の開設など、対外的な信用が必要な場面で「団体名義で行える」ようになり、団体名義で資産を保有することも可能です。

任意団体では代表者個人の名義で契約せざるを得ない場合が多く、代表者の変更時などに問題が生じるリスクがありますが、法人格があればそのような懸念が解消されます。

また、NPO法人は情報公開が義務付けられているため透明性が高く、一般の人々が団体にアクセスしやすくなり、活動への参加者や会員も集めやすくなります。

さらに、法人格を持つことで「従業員を雇用しやすくなる」というメリットもあり、これにより活動をより専門的かつ継続的に展開することが可能になります。  

【メリット2】資金調達の機会拡大

NPO法人化の大きなメリットの一つは、資金調達の機会が格段に広がることです。

多くの助成金や行政からの委託事業では、「法人格」が応募条件となっているため、NPO法人になることでこれらの大規模な資金源にアクセスできるようになります。  

特に、公的機関との事業連携がしやすくなる点は重要です。国や地方公共団体は、特定の社会課題解決のためにNPO法人に事業を委託するケースが増えています。

これにより、NPO法人は大規模な事業に関わる機会を得て、団体の認知度や知名度向上にもつながります。

これは、NPO法人がボランティアだけに頼らず、雇用を創出し、組織的な運営を可能にする大きな強みです。

高い社会的信頼性と法人格が、公的機関との連携を促進し、安定した事業収入をもたらすという好循環が生まれるのです。  

【メリット3】設立費用の低減

NPO法人の設立は、一般的な営利企業と比較して、少額の費用で設立できます

法律上の最低資本金や出資金の規定がなく、株式会社設立にかかる登録免許税もNPO法人は対象外であるため、法人の印鑑作成費用や役員の住民票取得費用など、ごくわずかな費用で手続きが可能です。

この低い設立ハードルは、社会貢献への熱意を持つ人々が活動を法人化しやすい環境を提供しています。  

【メリット4】税制上の優遇措置

税制面でもNPO法人にはメリットがあります。

収益事業を行っていないNPO法人に対しては、法人住民税などが免除される場合があります

任意団体の場合、活動内容によっては代表者個人の所得とみなされて課税されるリスクがありますが、法人化することでこのリスクを軽減できます。  

さらに、特に重要なのが「認定NPO法人または特例認定NPO法人」になると得られる税制優遇です。

これらの法人への寄付は、寄付をした個人や企業にとって所得税や住民税の寄付金控除の対象となるため、寄付を呼び込みやすくなります。

この制度は、NPO法人自身だけでなく、その活動を支援する人々にもメリットをもたらすことで、社会全体でのNPO活動への参加を促進する仕組みとなっています。

このような税制上のインセンティブは、NPOがより多くの資金を調達し、その活動を拡大するための強力な後押しとなります。  

これらのメリットは、NPO法人化が単なる形式的な手続きではなく、組織の成長と社会的なインパクトを最大化するための戦略的な投資であることを示しています。

法人格の取得は、信頼性の向上、資金調達の多様化、そして人材確保の容易化という相互に強化し合う関係性を生み出し、結果として組織のミッション達成能力を飛躍的に高める可能性を秘めています。

NPO法人設立のデメリット

NPO法人設立には多くのメリットがある一方で、その制度は厳格な要件と義務を伴い、いくつかの課題や負担も存在します。

これらを事前に理解しておくことは、持続可能な運営を目指す上で不可欠です。

【デメリット1】設立手続きの複雑さと期間

NPO法人の設立は、一般的な営利企業(株式会社など)と比較して、非常に長い時間を要します。

申請書類の準備から所轄庁への申請、その後1ヶ月間の「縦覧」(市民への公開期間)、さらにその後の2ヶ月以内の所轄庁による審査、そして法務局での登記完了まで、全体で最低でも3か月以上、通常は4ヶ月程度はかかります。

これは、一般的な営利企業の設立が1~2週間程度で完了するのと比べると、大幅に長い期間です。

この長い設立期間は、迅速な活動開始を望む団体にとって大きな障壁となる可能性があります。  

【デメリット2】社員数・役員構成の厳格な要件

NPO法人として認証を受けるためには、組織体制に関する厳格な要件を満たす必要があります。

具体的には、活動の趣旨に賛同する10名以上の社員(総会で議決権を持つ会員)が必要です。ま

た、組織運営のために3名以上の理事と、1名以上の監事を置かなければなりません。

設立時にこれらの人員を確保することは、特に小規模な団体や特定の専門分野に特化した団体にとって、大きな課題となる場合があります。

この要件は、NPO法人のガバナンスと透明性を確保するためのものですが、同時に設立のハードルを高める要因にもなります。  

【デメリット3】厳格な情報公開と決算手続きの負担

NPO法人は、その公益性ゆえに、厳格な情報公開と会計処理が義務付けられています。

事業年度終了後には、所轄庁へ事業報告書や活動計算書、財産目録などの提出が義務付けられています

これらの書類を適切に管理し、期限内に提出することは、特に専門的な知識を持たない小規模なNPO法人にとって重い負担となることがあります。

また、定款の変更に関する手続きも複雑で、厳格な審査が伴い時間がかかります。

このような事務処理の負担は、団体の限られた人的・時間的資源を、本来の社会貢献活動から奪う可能性も秘めています。  

【デメリット4】事業内容の制限

NPO法人が行える活動は、法律で定められた20の特定非営利活動分野に限定されています。(内閣府NPOホームページ:「どのような活動が20の分野に該当しますか」)

このため、自由に事業内容を選定できないという制約があり、将来的に事業の多様化を図るのが難しい点がデメリットとして挙げられます。

例えば、新たな社会課題に対応するために、既存の20分野に該当しない活動を始めたい場合、定款変更や新たな法人設立が必要になるなど、柔軟な事業展開が制限される可能性があります。  

【デメリット5】資金繰りの不安定性

NPO法人は営利目的で活動を行わないため、安定した収益源を確保するのが難しい場合があります。

特に、寄付金や助成金といった外部資金に依存している場合、これらの収入は景気変動や社会情勢によって不安定になりがちで、資金繰りが不安定になることが考えられます。

そのため、持続可能な運営を目指すには、常にしっかりとした資金計画を立て、会費、事業収入、委託費など、多様な資金源を確保する努力が求められます。

これは、社会貢献というミッションと経済的な持続可能性という二つの側面を常に両立させるという、NPO法人に特有の課題と言えます。  

以下に、NPO法人設立の主要な要件と注意点をまとめます。

NPO法人設立の主要要件と注意点

項目要件・注意点
設立要件
営利目的営利を目的としない(利益を社員等に分配しない)
主たる目的特定非営利活動を行うことを主たる目的とする
活動対象不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与すること
宗教・政治活動宗教の教義を広めたり、政治上の主義を推進することを主たる目的としない
暴力団関係暴力団又はその構成員の統制下にある団体でない
社員数10人以上の社員(総会で議決権を持つ会員)を有すること
役員構成理事3名以上、監事1名以上を置くこと
役員報酬報酬を受ける役員の数が役員総数の3分の1以下であること
社員資格資格の得喪に関して不当な条件を付さないこと
設立・運営上の注意点
設立期間最低3ヶ月以上、書類作成から登記完了まで4ヶ月程度かかる
決算・情報公開事業報告書、活動計算書、財産目録等の所轄庁への提出が義務付けられる
事業内容の制限法律で定められた20の特定非営利活動分野に限定される
資金繰りの不安定性寄付金や助成金への依存度が高く、安定した収益源確保が難しい場合がある
定款変更手続きが複雑で、厳格な審査と時間がかかる

これらのデメリットは、NPO法人化を検討する際に、そのメリットと天秤にかけるべき重要な要素です。

法人格取得による信頼性や資金調達の機会拡大という利点は大きいものの、それに伴う行政手続きの負担や組織運営の厳格化、そして資金の安定性確保への継続的な努力は、決して軽視できない課題と言えます。

まとめ

まとめ

本記事では、「非営利だったら給料はどうなるの?」というNPO法人に関する一般的な疑問を中心に、その制度のメリットとデメリットについて詳しく解説しました。

NPO法人は、「非営利=無給」という誤解とは異なり、労働の対価として給料を支払い、労働基準法に則って従業員を雇用する「組織」です。

その「非営利」とは、得た利益を構成員に分配せず、社会貢献活動のために再投資することを意味します。

NPO法人の給料は、寄付、事業収入、会費、行政からの補助金や委託費など、多様な財源から賄われており、その財務基盤は多角化されています。

役員報酬には制限があるものの、職員としての給与は適切に支払われる仕組みが整っています。

NPO法人格を取得することは、社会的信頼性の獲得、資金調達の機会拡大、法人名義での活動の利便性、税制優遇など、多くのメリットをもたらします。

これにより、活動の規模を拡大し、より大きな社会貢献を目指すことが可能になります。

法人格を持つことで、組織はよりプロフェッショナルな運営体制を確立し、社会に対して透明性と説明責任を果たすことができます。

これは、単なる個人の善意を超えて、持続的かつ広範な社会変革を推進するための重要な基盤となります。

一方で、設立手続きの複雑さ、厳格な人員・組織要件、事務負担の大きさ、事業内容の制限、そして資金繰りの課題など、乗り越えるべきデメリットも存在します。

これらの課題は、NPO法人が社会的な信頼を得るための代償とも言えますが、特にリソースが限られる小規模団体にとっては、活動を阻害する要因にもなりかねません。

NPO法人は、営利企業ではカバーしきれない多様な社会課題に対し、市民の自発的な意思に基づき柔軟かつきめ細やかな活動を展開する、現代社会に不可欠な存在です。

その制度を賢く活用し、メリットを最大限に引き出しつつ、デメリットへの対策を講じることが、NPO法人として持続可能な運営を実現し、社会貢献への情熱を具体的な活動へと繋げ、より良い社会の実現に貢献するための鍵となります。

NPO法人制度への正しい理解が、社会貢献活動のさらなる発展に繋がることを期待します。