先日、「横関さんの話を聞いていたら自分も行政書士の仕事をしてみたくなったので、今度行政書士の試験を受けてもいいでしょうか?」というご相談を頂きました。
「もちろん、構いませんよ!でも、なんでそんな事を聞くんですか?」と不思議に思って聞いてみたところ「横関さんに起業の相談にのってもらったのに、商売敵になるなんて、恩を仇で返すようで、失礼かなって心配になったので・・・」と言われていました。
なんて、親切な人なんだって逆に私が感動しました(笑)
その方へは「同業者だからって商売敵になるとは限らないんですよ。是非行政書士になって下さい」とお答えしました。
今回は、同業者が増えても決してマイナスではなく、むしろ自分にとってプラスになるという私の考え方をご紹介出来ればと思います。
みなさん、それぞれのお考えがあるとは思いますが、「そんな考え方もあるんだなあ」と少しでもみなさまのご参考になれば幸いです。
空気はなくならない
私は詳しい事は知りませんが、空気も無尽蔵にあるわけではなく、有限なのだと思います。
でも、「こんなに人が増えたら私の吸う空気がなくなるかも!どうしよう!」と心配する人はいませんよね。
それと同じで、私は、自分のお客様も無限ではないにしても、同業者が増えたくらいで仕事がなくなる心配はないと思っています。
そもそも、私は自分の行政書士が増えることを止めることは出来ません。
ですから、行政書士が増えることを心配しても時間の無駄ですよね(笑)
後で事例を挙げてご紹介しますが、実は同業者が増えた方が自分の仕事にとってプラスになる事の方が多いと思っています。
「秘密の釣り堀」だけで生計を立てない
私が起業のご相談を頂く時に使う例え話でご説明したいと思います。
山奥にある誰にも知られていない小さな池があります。
そこに、自分で獲ってきた魚を放して釣り堀を作ったとします。
で、あなたは、毎日必要な分だけ釣って生活をしています。
私は、こういったビジネス形態を「秘密の釣り堀で魚を釣る」と考えています。
「秘密の釣り堀」って、何?
それでは、「秘密の釣り堀」のようなビジネス形態とは、どんなものなのでしょうか?
私の会社を例にして考えてみましょう。
私はWEB制作会社も経営しています。
その会社はホームページのサーバー管理や文字などの修正をして毎月お客様から定額の費用を頂いています。
ホームページの管理は、一度スタートすると他の会社に変更するのが非常に面倒です。
ですから、一度管理を任されたお客様は、余程の事が無い限り別の会社に変更することはありません。
つまり、一度受注したら、競争もなく、ずっと安定収入が期待出来るのです。
これが私の言うビジネスでの「秘密の釣り堀」です。
理想的なビジネスですよね。
こういった競争もなく安定収入が見込めるビジネスは本当に重要だと思います。
お客様がいなくなるかも!
ところが、この競争の無い「秘密の釣り堀」に慣れてしまうと非常に危険だと思うのです。
新規の顧客をとれなくても安定収入があります。
既存客に新しいサービスを提供しなくても安定収入があります。
極論を言えば、何も新しいことをしなくても安定収入があります。
これが当たり前になると非常に危険だと思うのです。
例えば、先程のホームページの保守サービスで10年間、50社から月額3万円をもらっていたとします。
その「秘密の釣り堀」に気がついた競合の会社が「月額1万円で、さらに新しいサポートも追加します」と全てのお客様に売り込みをかけて40社が変更した場合、顧客の80%を失うことになります。
慌てて「他社が1万円って言ってたなら、うちも1万円に下げます」なんてことを言ったら「じゃあ、今まで10年も払った月3万円ってなんだったの?」と怒られ信用も無くしてしまいます。
なんとか説得して、月額費用を3万円から1万円にして継続してもらったとしても、利益は大幅に減って事業として大打撃を受けてしまうでしょう。
「秘密の釣り堀」という競争の少ない安定収入が見込める顧客は非常に大事ですが、この限られた顧客だけに頼っていると、同業者が「自分の敵」になる可能性があると思います。
同業者が増えて、何故自分にプラスになるのか?
それでは、同業者が「自分の敵」にならないのは、どのような場合なのでしょうか?
それは「同業者を仲間にする」仕事のやり方です。
私の仕事の一つである行政書士を例に考えてみましょう。
冒頭のクライアントの方が来年の行政書士試験に合格して行政書士になられたとします。
その方が、私の事務所と同じ商圏内に事務所を作られたとしたら、私の商売敵になるのでしょうか?
それが、そうとも限らないのです。
行政書士という仕事は、会社設立のような「法人関連」の仕事、外国人の帰化申請のような「外国人関連」の仕事、遺言のような「相続関連」の仕事のように多岐に渡っています。
すべての分野をカバーすることはかなり難しいと言えます。
私の事務所は外国人のビザ申請を得意分野の一つにしています。
ビザの仕事は得意ですが、建築業許可申請は苦手です。
お客様から建設業許可申請の依頼を受けた場合、建設業許可申請に強い仲の良い行政書士に依頼します。
そうすると、お客様にも喜ばれますし、お願いした行政書士(同業者)にも喜ばれますし、私も喜びます。
また、逆に同業者から私が仕事をもらう場合もあります。
私が得意としている外国人ビザ申請の中でも、経営管理ビザと呼ばれるビザの申請です。
経営管理ビザは不許可になった場合のリスクが非常に高い仕事ですなので、他の行政書士から依頼が来るのです。
同じ得意分野の同業者には、自分が忙しくて対応出来ない場合に助けてもらうこともあるのです。
どのパターンでも「同業者」と「私」は助け合う仲間の関係です。
このように、限られた顧客を取り合うのではなく、たくさんいる新規の顧客を一緒に開拓するような付き合い方をしていると、同業者は「敵」ではなく「味方」になるのです。
これは行政書士に限らず、私が経営している貿易会社の仕事もWEB制作会社の仕事も全く同じことが言えます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
自分の仕事の同業者が増えることを止めることは出来ませんが、増えることをプラスと捉える事で、結果が大きく変わってくることがお判り頂けたかと思います。
いずれ、「秘密の釣り堀」は競合他社に見つかってしまいます。
安定収入が期待出来る限られた顧客だけに頼らずに、新規でいろんな顧客を獲得することも並行して進めることが、結果としてビジネスも安定するのだと思います。
競争してサービスの質を上げるということは、顧客にとってのメリットでもあります。
同業者を敵とは考えずに、一緒に顧客に対してのサービスの質を上げる仲間だと考えてみてはどうでしょうか。
そうなれば、顧客も、あなたも、同業者もみな幸せになる「三方よし」となります。
同業者は敵と思えば敵になりますし、味方と思えば味方になるのです。