正社員が副業を始める前に知っておきたい7つの注意点

はじめに

近年、副業を始める社会人が増えています。

特に2018年の働き方改革で厚生労働省がモデル就業規則を改定し、副業・兼業を容認する流れが広がったことで、大手企業でも就業規則を見直し副業を解禁・容認するケースが増えてきました。

企業に正社員で働かれている方の中にも、「収入を増やしたい」「定年後に備えてスキルを活かしたい」などの理由で副業に挑戦する方が増えています。

しかし、副業を始めるにあたっては本業との両立や各種手続きなど注意すべきポイントがいくつかあります。

本記事では、企業勤務の正社員の方を対象に、副業全般に関する注意点を解説します。

【注意点1】就業規則の確認

就業規則の確認

副業を検討し始めたら、まず自分の会社の就業規則を必ず確認しましょう

多くの企業では就業規則に副業の可否や事前申請のルールが明記されており、「副業禁止」とされている場合や「事前に会社の許可が必要」と定められている場合もあります。

もし就業規則で副業が禁止されていたり、許可制になっているにも関わらず無断で始めてしまうと、規則違反として懲戒処分や最悪の場合は解雇につながる可能性もあります。

そのため、事前の確認と会社への相談は必須です。

ポイントとしては、以下の点を会社で確認しておくと安心です:

  1. 副業が許可されているかどうか(全面禁止なのか一部条件付きで許可なのか)

  2. 事前申請や届出の必要性(副業を始める前に上司や人事部への申請が求められるか)

  3. 許可される副業の範囲(競合他社での勤務や、自社の業務と関係する仕事が禁止されていないか)

会社によって規定は様々ですが、就業規則に従うことは社会人として基本です。

副業解禁の流れで容認している企業も増えていますが、自社がどういうスタンスかは必ず事前に確認しましょう

不明な点があれば人事部に相談することをおすすめします。「黙っていればバレないかな…」と思うかもしれませんが、後述する税金や保険の手続きなどから会社に発覚するケースもありますので、ルールはしっかり守りましょう。

【注意点2】税金関連の手続き

副業で収入が発生した場合、税金面での手続きも忘れずに行う必要があります。

副業で得た所得額によっては所得税や住民税の追加支払いが発生しますので、以下の点に注意しましょう。

確定申告の必要性

副業で得た所得が年間20万円を超える場合、確定申告が必要になります。

副業がアルバイトやパートなど給与所得であっても、給与の支払元が2箇所以上ある場合は原則として確定申告が必要です(副業の所得が20万円以下であっても、年末調整が副業分までされていないケースでは申告が必要になることがあります)。

本業で年末調整を受けていても、副業分については自分で税務署に申告することを忘れないようにしましょう。

住民税の変動

確定申告をすると、その内容が自治体にも通知され翌年の住民税に反映されます。

副業で収入が増えると住民税額も増えますが、会社員の場合は通常、住民税は会社が給与から天引き(特別徴収)して納付しています。

副業分の住民税が増えることで、会社の給与天引き額がアップし、会社に副業が知られるきっかけになることがあります。

対策として、確定申告時に住民税の納付方法を「自分で納付(普通徴収)」に切り替える方法があります。

そうすれば副業分の住民税は自分で納付する形となり、会社の給与天引きには反映されないため会社に副業がバレにくくなるケースもあります。

ただし、普通徴収への切り替えは副業収入が事業所得・雑所得など給与所得以外の場合に限定されるため、アルバイトなど給与形式の副業では自治体の判断で特別徴収に統合されてしまう可能性もあります。

いずれにせよ、住民税が大幅に増減すると会社の経理担当者は気付くことがありますので、「副業が会社にバレたら困る」という方は税金の処理方法に注意しましょう。

税金について不安な場合は、税務署や税理士に相談すると安心です。

副業の内容によっては消費税やその他の税金が関係する場合もありますが、まずは所得税と住民税の対応をしっかり行いましょう。

適切に申告・納税していれば怖がる必要はありませんし、後で追徴課税やペナルティを受ける心配もなく、安心して副業を継続できます。

【注意点3】情報漏洩や利益相反

情報漏洩や利益相反

副業を行う上で、情報漏洩(インフォメーションセキュリティ)や利益相反のリスクにも十分配慮が必要です。

本業の会社にとって、社員の副業によって次のような事態が生じることは大きな問題になります。

  • 本業の勤務に支障が出る場合(副業に時間や体力を取られすぎて本業の仕事のパフォーマンスが落ちる等)

  • 会社の企業秘密が漏洩する場合(本業で得た機密情報を副業で扱う、あるいはうっかり口外してしまう等)

  • 会社の名誉や信用を傷つける行為がある場合(副業の内容や働き方が社会的に問題となり、本業の会社の評判まで悪くなる等)

  • 競合となり会社の利益を害する場合(本業の会社と競争関係にあるビジネスで働いたり、自社のお客様を副業に誘導する等)

上記のような行為は、会社の就業規則でも禁止事項とされていることが多いです。

特に本業と同じ業界での副業競合他社への協力は利益相反(コンフリクト・オブ・インタレスト)となり、会社から厳しく咎められる可能性があります。

また、本業で知り得た機密情報や顧客情報を副業で利用することは情報漏洩にあたり重大な問題です。

副業を始める際は「本業の会社に迷惑をかけない」を最優先に考え、守秘義務の厳守競合避止義務を意識しましょう。

対策

副業の内容は本業とかけ離れた分野や趣味の延長線上のものにするなど、利益相反のリスクを減らす工夫をしてください。

また、副業中でも本業の会社の情報やノウハウをうっかり話してしまわないよう注意しましょう。

副業で使用するPCやサービスは本業とは切り離し、情報管理に気を配ることも大切です。

会社によっては副業に関する誓約書守秘義務契約の提出を求める場合もあります。

ルールを守って取り組めば、副業だからといって過度に心配する必要はありませんが、「本業あっての自分」という意識を持ち、信頼を損ねないようにしましょう。

【注意点4】労働時間の管理と健康への配慮

副業を始めるとどうしても働く時間が長くなりがちです。

労働時間の自己管理健康への配慮は、40〜50代の方にとって特に重要なポイントです。

まず、法律の面から確認しましょう。

日本の労働基準法では、たとえ複数の会社で働いていても労働時間は合算して考えるのが原則です。

同じ労働者が複数の雇用主で働く場合、通算した労働時間が1日8時間・週40時間を超える部分には割増賃金(残業代)が発生すると定められています。

これは法制度上の話ですが、現実問題として副業によって1日の総労働時間が長くなりすぎると過重労働となり、心身の健康を害したり本業の業務に差し支えが出たりする恐れがあります。

40〜50代は若い頃に比べ無理が利きにくくなる年代です。

本業で日中働いた上に、夜間や週末に副業を詰め込みすぎると、睡眠不足や疲労から健康を損ねてしまう可能性もあります。

実際に、副業に熱中するあまり休息時間が減って体調を崩してしまったり、本業中に集中力が切れてミスが増える…といった失敗例も耳にします。

本末転倒ですよね。

そうならないよう、ワークライフバランスを意識した時間管理が大切です。

本業と副業を合わせた労働時間が過度にならないように計画し、適度に休息日を設けましょう。

本業が忙しい週は無理に副業を入れない、一日あたり副業に充てる時間を制限する(例:「副業は平日1日2時間まで、休日は半日まで」など)といったルールを自分で決めるのも有効です。

また、自分だけで抱え込まず家族の理解や協力を得ることで精神的な負担も軽減されます。

何より健康第一です。

定期的に健康診断を受けたり、睡眠や運動の時間を確保するよう意識しましょう。

せっかく副業で収入ややりがいを得ても、体を壊しては意味がありません。無理なく続けられる範囲で働くことが、副業成功の秘訣でもあります。

自分のペースで、本業にも良い影響が出るような働き方を心がけてくださいね。

【注意点5】副業が社会保険に与える影響

見落としがちなのが、社会保険(健康保険や厚生年金など)への影響です。

副業の形態によっては、社会保険の加入条件や保険料負担が変わってくる可能性がありますので注意しましょう。

本業が会社員の場合、本業の勤務先で健康保険(組合健保や協会けんぽ)と厚生年金に加入している方がほとんどだと思います。

副業の内容次第では、この社会保険に関して以下のようなことが起こり得ます。

副業先でも社会保険に加入が必要になるケース

副業先で雇用契約を結び、一定以上の収入・労働時間で働く場合、副業先でも厚生年金・健康保険に加入しなければならないことがあります。

具体的には、副業先が厚生年金適用事業所(従業員規模が一定以上の会社など)で、かつ副業先での勤務時間が週20時間以上、月額報酬が88,000円以上などの条件を満たす場合です。

たとえば本業でフルタイム勤務しつつ、副業で月10万円・週20時間程度働くようなケースでは、本業・副業両方で社会保険加入手続きを行い、厚生年金保険料や健康保険料を両方の給与から天引きされることになります。

これを「社会保険の二重加入」と呼ぶこともあります。

二重加入による影響

社会保険に二重加入すると、その分保険料の負担が増えるため副業の手取り収入が目減りします。

また、手続きを通じて本業の会社に副業の雇用状況が知られる可能性があります(日本年金機構への届出の際に会社側が把握する場合など)。

一方でメリットとしては、副業分も厚生年金保険料を納めることで将来受け取る年金額が増える可能性があるなど、保険面の保障が手厚くなるという側面もあります。

しかし本業の会社に副業を隠したい場合は二重加入で発覚してしまうリスクがある点に注意が必要です。

副業が自営業・フリーランスの場合

副業先で雇用契約を結ばない業務委託や個人事業(フリーランス)として働く場合は、基本的に副業側では厚生年金や会社の健康保険には加入しません。

本業の会社の社会保険はそのまま継続しつつ、副業分の収入については国民年金・国民健康保険の枠内で処理する形になります。

ただし、副業の規模が大きくなり独立開業するような場合には、将来的に国民健康保険への切り替えなども検討する必要が出てきます。

副業を始める前に、自分の副業形態が社会保険の加入条件に影響しそうか確認しておきましょう。

もし副業先から「社会保険の加入手続きをしてください」と案内があったら、それは上記の条件に該当した可能性があります。

その場合は本業と副業の両方で保険料を負担することになります。逆に副業が少ない時間・収入に留まる範囲であれば、本業の社会保険に入ったままで副業側では何もする必要がないケースも多いです(例:月収が少額の短時間アルバイトや、スポット的な単発の仕事など)。

いずれにせよ、社会保険の手続きや保険料負担にも目を向けておくことが大切です。

不安な場合は会社の総務担当者や社会保険労務士に相談すると良いでしょう。

「せっかく副業で収入を増やしたのに、思ったより手取りが少ない…」と後から驚かないよう、事前にシミュレーションしておくと安心です。

【注意点6】法律的に違反となるケース

副業自体は憲法で保障された職業選択の自由もあり、基本的には法律違反ではありません

しかし、場合によっては法律に触れる副業も存在しますので知っておきましょう。

代表的なのは公務員の副業禁止です。

国家公務員法第103条・104条および地方公務員法第38条により、公務員は原則として営利目的の副業が禁止されています(一部、講師や執筆など許可される例外もありますが基本的にはNGです)。

そのため、もし読者の方が公務員である場合は、副業を行うこと自体が法律違反となり得ます。

公務員の副業が発覚した場合、法律違反として懲戒処分の対象になりますので注意が必要です。

また、業種によっては許可や資格が必要な副業もあります。

例えば、副業で飲食店を始めるなら保健所の営業許可が必要ですし、中古品を売買するビジネスでは古物商許可が求められます。

不動産賃貸業も物件規模によっては届出が必要になることがあります。

これらの許可を得ずに始めてしまうと法律違反(無許可営業)となる可能性があります。

さらに、自分自身は法に触れなくても副業の内容が違法スレスレというケースにも要注意です。

たとえば「高利貸しの手伝い」「違法なものの転売」「著作権違反のコンテンツ制作」等、法律に抵触するビジネスに関わってしまうとトラブルになります。

副業の求人やビジネス話を持ちかけられた際に、内容が怪しいと感じたらきっぱり断りましょう。40代・50代の豊富な社会経験を活かし、「うまい話には裏がある」という冷静さを持つことも大切です。

要するに、副業と言えど法令遵守(コンプライアンス)は本業同様に重要です。

副業を始める前に、その仕事に必要な資格や届け出がないか確認しましょう。

不明な場合は行政機関や専門家に相談するのも手です。

法律違反となり得る副業さえ避ければ、常識の範囲で趣味や特技を活かす副業に取り組む分には心配しすぎる必要はありません。

健全に副業を楽しみましょう。

【注意点7】家族への影響や時間の使い方

副業を始める際、家族への影響自分の時間の使い方についても考慮しましょう。

特に既婚でお子さんがいる方は、副業に時間を割くことで家族と過ごす時間が減ってしまう可能性があります。

実際、副業に熱中するあまり「家族との時間が取れずケンカになった」「休日も仕事ばかりで子どもに寂しい思いをさせてしまった」といった声も聞かれます。

副業は自分のための活動ですが、家族の理解と協力が得られるかどうかも成功のカギと言えるでしょう。

家族と話し合いましょう

副業を始める前に、なぜ副業をしたいのか、どのくらいの時間を副業に充てる予定かを家族に説明しておくことをおすすめします。

収入を増やして家計を助けたい、将来の独立に向けてチャレンジしたい、趣味を活かした仕事に挑戦したい等、正直な気持ちを共有しましょう。

目的を理解してもらえれば、家族も応援しやすくなりますし、協力も得やすくなります。

「家族に内緒でこっそり副業」はトラブルのもとです。

時間のルールを決める

家族サービスやプライベートな時間とのバランスを取るために、副業に使う時間のルール決めも有効です。

例えば「平日は子どもが寝てから深夜までの1〜2時間だけ副業する」「週末の家族団らんの時間は副業しない」など、家庭をおろそかにしない範囲で副業時間を確保しましょう。

実際に副業で成功している人の中には、「副業は1日1時間まで」と決めて家族との時間を優先しているケースもあります。

仕事と家庭の両立には時間管理の工夫が欠かせません。

家族の協力を得る

場合によっては家事や育児の分担を見直したり、外部サービスを利用して家族の負担を減らすことも検討しましょう。

副業に集中できる環境を作るためには、家族のサポートが助けになります。

例えば、「週に一度は家族に夕食の準備を手伝ってもらい、その時間を自分の副業に充てる」といった取り決めをする家庭もあります。

感謝の気持ちを伝えつつ、家族と協力体制を築けると理想的ですね。

最後に、家族あっての自分であることも忘れずに。

副業が忙しくても、家族とのコミュニケーションやイベント(誕生日や記念日など)は大切にしてください。

収入や自己実現も大事ですが、家族の笑顔や健康あってこそ充実した人生です。

副業によって家族との関係がギクシャクしては本末転倒ですので、お互いにとってハッピーな副業生活を目指しましょう。

おわりに

まとめ

副業は新たな収入源や生きがいをもたらしてくれる反面、本業との両立や各種手続きなど注意すべき点も多くあります。

40代・50代というキャリアも家庭も大切な時期に副業を始めるなら、ここまで述べた「7つの注意点」をぜひ押さえておいてください。

まとめると、まずは会社のルールを確認し、税金や社会保険などお金の手続きをきちんと行うことが基本です。

そして本業に支障を出さず情報漏洩にも気をつけるなど、社会人としてのマナーと責任を守りましょう。

さらに自分自身の健康管理家族との時間の両立も忘れずに意識することが大切です。

最初は戸惑うかもしれませんが、事前にしっかり準備しておけば副業は決して難しいものではありません。

むしろ、副業に挑戦することで新しいスキルが身についたり、人脈が広がったりと、人生の幅が広がる可能性があります。

定年後のセカンドキャリアの準備としても、副業で得た経験はきっと役立つでしょう。

不安な点は専門家や先輩副業者に相談しながら、一歩ずつ始めてみてください。

ルールを守って取り組めば、副業はあなたの生活をより豊かにしてくれるはずです。応援しています。

一緒に充実した副業ライフを送りましょうね。まずは無理のない範囲で、できることからスタートしてみてください!