
目次
はじめに
社会保険労務士(社労士)の先生方は、日々、膨大な情報と格闘されています。
頻繁な法改正のキャッチアップ、顧問先ごとに積み上がる就業規則や契約書、そして山のような行政手続書類。
これらを正確に処理しながら、質の高いコンサルティングを提供することは、決して容易なことではありません 。
「あの通達、どの資料に書いてあっただろうか?」 「新しい助成金の要件を、分厚い手引きから探し出すのが大変だ…」 「クライアントへの提案書を作成したいが、関連資料の整理だけで一日が終わってしまう」
もし、このような情報整理や資料読解に関する悩みを劇的に解決し、先生が本来注力すべき「専門家としての価値提供」に、より多くの時間を割けるようになるとしたら、いかがでしょうか。
今回ご紹介するGoogleの「NotebookLM」は、まさにそのためのツールです。
これは単なる流行りのAIチャットではありません。先生がお持ちの信頼できる資料、例えば法律の条文、判例、顧問先の就業規則などを読み込ませることで、その情報だけを基に働く「あなた専用のAIリサーチ・思考パートナー」となるのです 。
この記事では、社労士の先生方がNotebookLMを最大限に活用し、日々の業務を効率化し、コンサルティングの質をさらに高めるための具体的な方法を、専門家の視点から、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説します。
NotebookLMとは何か、多くの人が知るChatGPTと何が違うのか、社労士業務に特化した具体的な活用術、セキュリティや料金プランまで分かりやすくご説明したいと思います。
NotebookLMとは?ChatGPTとの違いもズバリ解説

多くの先生方が「AI」と聞くと、質問すれば何でも答えてくれるChatGPTのようなツールを思い浮かべるかもしれません。
しかし、専門家が業務で使うには、情報の正確性と信頼性が何よりも重要です。
NotebookLMは、まさにその専門家のニーズに応えるために設計された、まったく新しいコンセプトのAIツールです。
「信頼できる資料」だけが知識源のAI
NotebookLMは、Googleが開発したAI搭載のノート作成・リサーチ支援ツールです。
その最大の特徴は「ソース・グラウンディング(Source-grounding)」という考え方にあります。
これは、AIが回答や要約を生成する際に、ユーザーがアップロードした特定の資料だけを知識源とする、という仕組みです。
AIがインターネット上の不確かな情報から回答を生成するのではなく、指定された信頼できる情報源に根差して(グラウンドして)応答することで、AIがもっともらしい嘘や誤情報を生成する「ハルシネーション」のリスクが劇的に低減されます 。
士業業務のように、一つの間違いが大きな問題になりかねない分野において、これは決定的に重要な要素です。
読み込ませることができる資料(ソース)の種類も豊富で、PDFやテキストファイルはもちろん、Googleドキュメント、WebサイトのURL、さらにはYouTube動画(の字幕情報)まで対応しています 。
また、資料に含まれる図やグラフ、画像の内容を認識し、それらに関する質問にも答えることができます。
例えば、官公庁のWEBサイトページや自社のマニュアルのpdfなどを取り込んで使うことが出来ます。
NotebookLMが生成した回答には、必ず引用元(Citations)が付記されます 。
回答の横にある番号をクリックするだけで、元の資料のどの部分を根拠にしているのかが瞬時にハイライト表示され、いつでも事実確認(ファクトチェック)が可能です。
これにより、先生はAIの回答を盲信するのではなく、あくまで「信頼できるアシスタント」として、安心して活用することができるのです。
NotebookLMがもたらす変革を視覚的にご理解いただくために、従来の情報収集との比較を以下の表にまとめました。
項目 | 従来の方法 | NotebookLMを活用した場合 |
情報検索 | 官公庁HP、専門書、判例データベース等を個別に検索。適切なキーワードの選定が難しく、情報が点在。 | 関連資料を一度アップロードすれば、自然な言葉で複数の資料を横断的に質問できる。 |
時間 | 数時間~数日。膨大な資料を一つひとつ読み込む必要がある。 | 数分~数十分。AIが瞬時に資料を読み込み、要約・分析を行う。 |
正確性 | 読み間違いや解釈の誤り、重要な情報の見落としといったヒューマンエラーのリスクが常に存在する。 | 回答には必ず引用元が明示され、常に一次情報に立ち返れるため、ファクトチェックが容易かつ確実。 |
知識の定着 | 読んだ内容を別途メモやノートにまとめ、手動で整理する必要がある。 | 重要な回答や発見を「ピン留め」するだけで、自動でノートが作成され、知識がツール内に蓄積される。 |
負担 | 膨大な情報の中から必要な箇所を探し出す精神的・時間的負担が大きい。 | 調査の初期段階(情報の洗い出し・整理)をAIに任せ、人間はより高度な分析・判断に集中できる。 |
ChatGPTとの決定的な違い
では、なぜ専門業務にはChatGPTよりもNotebookLMが適しているのでしょうか。
その違いは、AIが情報を参照する「範囲」にあります。
ChatGPT(一般的な生成AI)
インターネット全体という「オープンな世界」の膨大な情報を学習しています。
そのため、一般的な知識に関する質問や、創造的なアイデア出しには非常に強力です。
しかし、その情報源には不正確なものや古いものも含まれており、専門的な回答を求める際には常にハルシネーションのリスクが伴います。
NotebookLM
先生が選んだ法律、判例、クライアント資料といった「クローズドな世界」の情報だけを学習します。
つまり、先生の専門知識や信頼する情報でパーソナライズされた「専門家AI」になるのです。
士業の業務で求められる答えは、ほとんどの場合、インターネットの海の中ではなく、先生の手元にある資料の中に存在します。
NotebookLMは、その手元の資料を知能化し、対話可能なデータベースへと変えるツールなのです。
この違いを理解することが、AIを業務で使いこなすための第一歩です。
以下の比較表で、その特性を整理してみましょう。
NotebookLMとChatGPTの比較
特徴 | NotebookLM | ChatGPT (一般的な生成AI) |
主な情報源 | ユーザーがアップロードした信頼できる資料 | インターネット上の膨大で不特定多数のデータ |
ハルシネーションリスク | 低い(引用元で常に確認可能) | 高い(事実と異なる情報を生成する可能性) |
得意なこと | 専門資料の読解、要約、分析、情報整理 | アイデア出し、文章作成、一般的な質問への回答 |
情報の信頼性 | 非常に高い(自分の資料がベース) | 常にファクトチェックが必須 |
データプライバシー(学習利用) | 個人のデータはAIモデルの学習に使われない | 入力データがモデルの学習に使われる可能性がある |
このように、一般的な情報収集や創造的な作業にはChatGPT、そして正確性と信頼性が求められる専門業務にはNotebookLMと、目的によって使い分けることが賢明です。
NotebookLMは業務の質と効率を飛躍させる強力なツールとなります。
社労士業務におけるNotebookLMの使い方
NotebookLMが社労士業務にとって、いかに強力なツールであるかをご理解いただけたかと思います。
ここでは、先生方の日々の業務に即した、より具体的で実践的な使い方を7つご紹介します。
これらの活用術を実践することで、先生の業務はより効率的で、より付加価値の高いものへと進化するでしょう。
【使い方1】法令・判例を調べるための「自分専用のAI」
労働基準法、労働契約法、各種通達、そして膨大な判例。
これらを正確に参照し、クライアントにアドバイスすることは社労士の基本業務ですが、必要な情報を探し出す作業は非常に時間がかかります。
NotebookLMでの解決策
NotebookLMで「労働法規データベース」というノートブックを作成します。
ここに、労働基準法、労働契約法、育児・介護休業法などの主要な法律のPDF、厚生労働省の重要な通達やガイドライン、そして業務で頻繁に参照する主要な判例のPDFをアップロードします 。
NotebookLMの具体的な使い方
これまでは分厚い書籍をめくったり、複数のウェブサイトを検索したりしていた作業が、自然な言葉での質問に変わります。
「時間外労働の上限規制に関する最新の判例を要約して」
「育児・介護休業法の2025年改正による、企業側の対応義務をリストアップして」
「解雇権濫用法理について、重要な判例を3つ挙げ、それぞれの要点を説明して」
このように質問するだけで、NotebookLMはアップロードされた資料の中から関連する条文や判例を瞬時に探し出し、要約を提示します。
もちろん、すべての回答には引用元が示されるため、すぐに原文を確認できます。
このようにNotebookLMは「自分専用のAI」になります。
【使い方2】顧問先ごとの情報を一元管理
顧問先が増えるほど、その管理は複雑になります。
就業規則、労働契約書、36協定、過去の相談メール、議事録など、情報は様々な場所に散在しがちです。
NotebookLMでの解決策
顧問先ごとに専用のノートブックを作成します(例:「株式会社A社 労務資料」)。
このノートブックに、そのクライアントに関するあらゆる資料(就業規則、各種規程、雇用契約書のひな形、議事録、重要なメールのやり取りをコピー&ペーストしたテキストファイルなど)を一元的にアップロードします 。
NotebookLMの具体的な使い方
クライアントとの打ち合わせ前や、急な問い合わせがあった際に、その真価を発揮します。
「A社との前回の打ち合わせ議事録から、当方の宿題事項を抜き出して」
「A社の就業規則における、休職に関する規定を要約して」
「A社から過去にあったハラスメント相談の経緯を時系列で整理して」
このように尋ねるだけで、AIが膨大な資料の中から必要な情報を探し出し、整理してくれます。
これにより、打ち合わせの準備時間が大幅に短縮され、常に的確な対応が可能になります 。
【使い方3】就業規則や契約書のレビューの高速化
就業規則や各種規程、雇用契約書の作成・レビューは、社労士の独占業務(2号業務)であり、非常に重要な業務です。
条文の抜け漏れや法的なリスクがないかを確認する作業には、高い集中力と多くの時間が必要です。
NotebookLMでの解決策
レビュー用のノートブックを作成し、クライアントから預かった就業規則のドラフト(案)と、事務所で使っている最新のモデル就業規則や法改正に対応したチェックリストなどを一緒にアップロードします。
NotebookLMの具体的な使い方
AIに「比較・分析」の役割を担わせることで、レビューの初動を高速化します。
「この就業規則案について、当事務所のモデル規程と比較して、欠落している条項や、法的にリスクとなりうる記述を指摘してください」
「2025年4月の法改正に対応していない可能性のある箇所をすべてリストアップして」
「パートタイム・有期雇用労働法に関して、この規程で修正が必要な点を教えて」
AIが機械的にチェックできる部分を任せることで、先生はより高度な判断、つまり「その企業の実態に即した、より良い規定は何か」という戦略的なアドバイスに集中できるようになります。
【使い方4】助成金・補助金の申請サポート
働き方改革関連など、企業にとって有益な助成金は数多く存在しますが、その公募要領は非常に複雑で、要件も細かいのが実情です。
一つの要件を見落としただけで不採択になることもあり、申請代行業務には細心の注意が求められます。
NotebookLMでの解決策
特定の助成金(例:「働き方改革推進支援助成金」)ごとにノートブックを作成します。
ここに、公式サイトからダウンロードした公募要領、Q&A集、申請様式、関連するパンフレットなど、すべての公式資料をアップロードします 。
NotebookLMの具体的な使い方
分厚い手引きを隅から隅まで読むのではなく、AIに「ガイド」をさせます。
「この助成金の申請に必要な書類をチェックリスト形式で作成して」
「対象となる事業主の要件を、箇条書きで分かりやすくまとめて」
「申請書の『事業実施計画』の項目で、必ず記載すべきポイントを教えて」
NotebookLMの「FAQ作成」や「タイムライン作成」機能を使えば、申請から受給までの流れや、よくある質問を自動で整理することも可能です。
これにより、難解な公募要領が対話可能なマニュアルに変わり、申請業務の精度と効率が飛躍的に向上します 。
【使い方5】3号業務(コンサルティング)の質を高める
書類作成や手続き代行(1号・2号業務)に加え、今後ますます重要になるのが労務管理に関する相談・指導、いわゆる3号業務(コンサルティング業務)です。
他との差別化を図るには、経験や勘だけでなく、データに基づいた説得力のあるコンサルティングが求められます。
NotebookLMでの解決策
クライアントの許可を得て、従業員満足度調査の結果、退職者アンケート、ストレスチェックの集団分析結果などの資料を提供してもらい、安全なクライアント専用ノートブックにアップロードします。
NotebookLMの具体的な使い方
AIにデータ分析の視点を与え、コンサルティングの根拠を探させます。
「退職者アンケートの自由記述欄から、退職理由として最も多く挙げられているテーマを5つ抽出して」
「従業員満足度調査の結果から、『人間関係』と『評価制度』に関するコメントを抜き出し、ポジティブな意見とネガティブな意見に分類して」
このように、定性的なデータの中に隠れた傾向をAIに分析させることで、「最近、若手の離職が多いようです」といった漠然とした話ではなく、「データを見ると、特に評価の透明性に対する不満が離職の大きな要因となっているようです」といった、具体的な根拠に基づいた質の高いアドバイスが可能になります 。
【使い方6】事務所内のナレッジ共有と新人教育の効率化
ベテラン職員の知識やノウハウが属人化してしまったり、新人職員への教育に多くの時間が割かれてしまったりするのは、多くの事務所が抱える課題です 。
NotebookLMでの解決策
事務所内に「業務マニュアル」ノートブックを構築します。
ここには、各種手続きの標準的なフロー、クライアントへのメールテンプレート集、過去の成功事例や失敗事例をまとめたケーススタディ、給与計算のチェックリストなど、事務所の知的財産をすべて集約します 。
NotebookLMの具体的な使い方
新入職員や経験の浅い職員が、自ら学べる環境を提供します。
「新規で顧問契約を結んだ際の、社会保険の適用手続きの流れをステップバイステップで教えて」
「クライアントに従業員の解雇相談をされた際の、初期対応メールの文案を作成して」
「給与計算で間違いやすいポイントをまとめた学習ガイドを生成して」
これにより、新人は先輩の手を止めることなく自己解決できる場面が増え、教育担当者の負担も大幅に軽減されます。
事務所全体の業務品質の標準化と向上にも繋がります。
【使い方7】音声要約で移動時間を有効活用
顧問先への訪問など、社労士の先生方は移動時間も少なくありません。
この時間を有効活用できれば、生産性はさらに向上します。
NotebookLMでの解決策
NotebookLMのユニークな機能である「音声要約(Audio Overview)」を活用します。
これは、アップロードした資料の内容を、AIが対話形式のポッドキャスト風に読み上げてくれる機能です。
NotebookLMの具体的な使い方
クライアント先へ向かう電車の中や車の中で、効率的に情報をインプットできます。
- 訪問前に、そのクライアントとの過去の議事録や関連資料をアップロードし、音声要約を生成。移動中に聞きながら、論点を再確認する。
- 読みたいと思っていた業界レポートや、最新の法改正に関する解説記事のURLをソースとして追加し、音声で内容をインプットする。
これにより、これまでデッドタイムになりがちだった移動時間が、貴重な学習時間や準備時間に変わります。「ながら聞き」でインプットできるため、多忙な先生方にとって非常に価値のある機能です 。
これらの活用術はほんの一例です。先生方の業務内容やアイデア次第で、NotebookLMの可能性は無限に広がります。
社労士の悩みとNotebookLMによる解決策
社労士の日常的な課題 | NotebookLMによる解決策 |
頻繁な法改正や通達のキャッチアップが大変 | 法令・通達PDFをアップし、要点や変更点を質問形式で即座に抽出 |
顧問先ごとに増え続ける資料の管理が煩雑 | 顧問先ごとにノートブックを作成し、契約書や議事録を一元管理。AIが内容を把握 |
就業規則や助成金申請書の作成に時間がかかる | 関連資料を読み込ませ、FAQやタイムライン、要約資料を自動生成し、作成を支援 |
事務所内の業務手順やノウハウが属人化しがち | 事務所マニュアル用ノートブックを作成し、新人でも自走できるナレッジベースを構築 |
移動時間や隙間時間を有効活用したい | 音声要約(Audio Overview)機能で、資料をポッドキャストのように「ながら聞き」でインプット |
NotebookLMの基本的な使い方
理論は分かったけれど、実際にどうやって使えばいいのか不安、という先生方もご安心ください。
ここでは、NotebookLMの基本的な操作方法を6つのステップで解説します。
NotebookLMを使うための6つのステップ
NotebookLMは専門的な知識は一切不要で、Googleアカウントさえあれば誰でもすぐに始められます。
【ステップ1】アクセスとログイン
NotebookLMの公式サイトにアクセスし、お持ちのGoogleアカウントでサインインします。
【ステップ2】ノートブックを作成する
ログインすると、ダッシュボード画面が表示されます。
まずは、情報を整理するための箱となる「ノートブック」を作成しましょう。
画面左上にある「+ 新しいノートブック」ボタンをクリックします 。
このノートブックが、案件ごとの専用フォルダの役割を果たします。
例えば「【●●様】△△申請」のように、分かりやすい名前を付けましょう。
【ステップ3】ソース(資料)のアップロードする
ノートブックを作成すると、次に情報の元となる「ソース」を追加するよう促されます。
PDF、Googleドライブ上のファイル、ウェブサイトのURL、コピーしたテキスト、YouTube動画など、様々な形式に対応しています。
PC上のファイルをドラッグ&ドロップするだけで簡単に追加できます。
- 例1:PDFのアップロード 「PDF」を選択し、お使いのPCに保存されている法律の条文や助成金の手引きなどのファイルを選んでアップロードします。
- 例2:Webサイトの追加 「ウェブサイト」を選択し、官公庁のページなど、参考にしたいウェブページのURLを貼り付けて「ソースを追加」をクリックします。
ソースを追加すると、画面左側のパネルにアップロードした資料の一覧が表示されます 。これでAIとの対話の準備は完了です。
【ステップ4】チャットで質問する
画面下部にあるチャットボックスが、AIへの指示や質問を入力する場所です 。
ここに、自然な日本語で話しかけるように入力します。
入力例:「この資料の要点を3つにまとめてください」
すると、中央のパネルにAIからの回答が表示されます。
特に便利なのは、回答の文中にやといった青い四角で囲まれた番号(引用)が付いている点です。
この引用番号をクリックすると、画面左のソースパネルで、その回答の根拠となった箇所が黄色くハイライト表示されます。
これにより、いつでも情報の正確性を確認できます。
【ステップ5】ノートブックガイドの活用する
NotebookLMの真骨頂とも言えるのが、画面右下の「ノートブックガイド」にある自動整形機能です。
アップロードしたソースを基に、様々な形式のドキュメントをワンクリックで生成できます。
- FAQ(よくある質問): 資料内容に基づいたQ&Aを自動生成します。
- タイムライン: 資料から日付や出来事を抽出し、時系列に整理します。
- 学習ガイド: 専門用語の解説や、内容理解を深めるための練習問題を生成します。
【ステップ6】回答の保存(ピン留め)とメモ機能
チャットでのやり取りは一時的なもので、ブラウザを閉じると消えてしまいます。
重要な回答や気づきは、必ず保存しておきましょう。
各回答の右上にあるピン(📌)のアイコンをクリックすると、その内容を「ノート」として保存できます 。
保存されたノートは、チャットとは別に永続的に残り、後から見返したり、チームで共有したりすることが可能です。
また、自分で気づいたことなどを手動でメモとして追加することもでき、そのメモもAIの分析対象に含めることができます 。
料金プランについて
NotebookLMは、基本的な機能を無料で利用できます。個人での利用や、まずは試してみたいという先生方には十分な機能が提供されています。
さらに多くの機能を使いたい方向けに、有料プラン「NotebookLM Plus」も用意されています。無料版と有料版の主な違いは、一度に扱える資料の数や、1日に行える質問の回数などの「量」に関する制限です。業務で本格的に活用し、事務所全体の生産性を向上させたい場合は、有料プランへのアップグレードを検討する価値があるでしょう。料金はGoogle Workspaceのビジネスプランや、個人向けのGoogle One AI Premiumプラン(月額2,900円など)に含まれる形で提供されています。
※2025年6月22日時点の情報です。
安心して使うために ― セキュリティとAIの限界
士業の先生方が新しいツールを導入する上で、最も懸念されるのは「クライアント情報のセキュリティ」と「守秘義務」でしょう。
この点は、どれだけ強調してもしすぎることはありません。
NotebookLMのセキュリティとプライバシー
まず、Googleは公式に「NotebookLMにアップロードされたデータや、AIとのやり取りの内容を、GoogleのAIモデルのトレーニングに使用することはない(NotebookLMの詳細)」と明言しています。
アップロードされた資料は先生のアカウント内でのみ利用され、他のユーザーに見られることはありません。
これは、一般的な生成AIがユーザーの入力データを学習に利用する可能性がある点との大きな違いであり、機密情報を扱う専門家にとって非常に重要な安心材料です。
顧問先の情報を扱うなら「Google Workspaceアカウント」
NotebookLMは、利用するGoogleアカウントの種類によって、データの取り扱いに関するプライバシー保護のレベルが根本的に異なります。この違いを正確に理解することが、リスク管理の第一歩です。
- 個人用Googleアカウント(@gmail.comなど)の場合:
- Googleの利用規約が適用されます。この規約では、サービスの改善や不正利用の防止などを目的として、Googleの人間のレビュー担当者が入力内容を確認する可能性が留保されています 。
- たとえその可能性が低くとも、第三者に顧客の機密情報や個人情報が閲覧されるリスクが存在する以上、税理士法上の守秘義務の観点から、このリスクは許容できません。したがって、クライアント情報を扱う業務での利用は絶対に避けるべきです。
- 法人用Google Workspaceアカウントの場合:
- Google Workspace利用規約および、より厳格な「データ処理に関する追加条項(DPA: Data Processing Addendum)」が適用されます 。
- この契約に基づき、エンタープライズレベルのセキュリティとプライバシー保護が提供されます 。
- 具体的には、アップロードしたファイル、チャットの履歴、AIの回答は、人間のレビュー担当者によるレビューや、AIモデルの改善のために使用されることはないと明確に保証されています 。
- データはGmailやGoogleドライブといった他のGoogle Workspaceのコアサービスと同様に扱われ、厳格なセキュリティポリシーとコンプライアンスの下で保護されます 。
この違いを、以下の比較表しましたのでご参照下さい。
項目 | 個人用Googleアカウント | 法人用Google Workspaceアカウント |
---|---|---|
項目 | ||
データの人によるレビュー | フィードバック提供時などにレビューされる可能性あり | レビューされない |
AIモデルの学習への利用 | 利用されない | 利用されない |
セキュリティ基準 | 標準的なセキュリティ | エンタープライズレベルのセキュリティ・プライバシー保護 |
準拠する契約 | Google利用規約 | Google Workspace利用規約、データ処理に関する追加条項(DPA) |
安全に活用するための徹底事項
ただし、ツールのセキュリティが強固であっても、それを使う側の意識と実践が伴わなければ意味がありません。
安心してNotebookLMを活用するために、以下の点を徹底することをお勧めします。
- 情報の匿名化を心がける: ツールが安全であるとはいえ、万が一のリスクに備えるのがプロフェッショナルの姿勢です。特に機密性の高い個人情報(氏名、生年月日、パスポート番号など)は、アップロードする前に仮名に置き換えるなどの匿名化処理を施すことを推奨します。
- クライアントの同意を検討する: 業務でAIツールを利用することについて、事前にクライアントへ説明し、理解を得ておくことも有効な手段です。ツールの安全性と、活用することでクライアントにもたらされるメリット(迅速かつ正確な手続きなど)を説明することで、より深い信頼関係を築くことができます。
- Googleアカウントのセキュリティを強化する: NotebookLMのセキュリティは、土台となるGoogleアカウントのセキュリティに依存します。推測されにくい強力なパスワードを設定し、必ず二段階認証を有効にしてください。これが最も基本的かつ効果的な情報漏洩対策です。
AIの限界
最後に、忘れてはならないのは、AIはあくまで「ツール」であるという事実です。
NotebookLMは驚くほど優秀なリサーチアシスタントですが、最終的な法的判断や、クライアントの人生に寄り添った最適な提案を行うことはできません。
AIが生成したドラフトや要約を鵜呑みにするのではなく、必ずご自身の専門的な知見で最終確認を行い、責任を持つ。
この原則を徹底することが、AI時代における専門家の価値をさらに高めることにつながります。
NotebookLMを使いこなすための注意点とヒント

NotebookLMは非常に強力なツールですが、万能ではありません。
その特性と限界を正しく理解し、賢く使うことで、その価値を最大限に引き出すことができます。
ここでは、先生方が陥りがちな注意点と、より良い結果を得るためのヒントをいくつかご紹介します。
AIの回答は必ずファクトチェック
NotebookLMはソース・グラウンディングによりハルシネーションのリスクが低いとはいえ、AIが情報を100%正確に解釈するとは限りません。
特に、複雑な法的文章や、スキャンしたPDFで文字認識が不完全な場合などに、内容を誤って解釈する可能性があります。
AIの回答は、あくまで「非常に優秀なアシスタントが作成した第一稿」と捉えましょう。
重要な判断を下す前には、必ず引用元機能を使って元のソースを確認し、ご自身の専門知識で最終的なファクトチェックを行う習慣をつけてください。
AIは業務を加速させるためのツールであり、専門家としての最終的な判断責任を代替するものではありません。
ソースの限界を理解する
NotebookLMが一度に扱える情報量には物理的な上限があります。
現在の制限は、1つのソースあたり50万ワード、またはファイルサイズ200MBまでとなっています。(2025年6月23日時点)
この上限を超えた部分は、AIが認識・分析することができません。
数百ページに及ぶような非常に分厚い法律の解説書や、長大な報告書をソースとして使いたい場合は、そのままアップロードするのではなく、章ごとやテーマごとにファイルを分割してからアップロードすることをお勧めします。
これにより、文書のすべての部分がAIの分析対象となり、より網羅的で正確な回答を得られるようになります。
プロンプト(指示文)のコツ
AIから質の高いアウトプットを引き出すためには、質の高いインプット、つまり「良いプロンプト」が不可欠です。
漠然とした指示では、AIも漠然とした回答しか返せません。
具体的で、役割や文脈を明確にしたプロンプトを心がけましょう。
- 悪いプロンプトの例:
「この就業規則について教えて」
- 良いプロンプトの例:
「あなたは経験豊富な社労士として、この就業規則案をレビューし、中小企業が見落としがちな労務リスクの観点から、修正すべき点を3つ、具体的な条文番号と共に指摘してください」
このように、AIに「役割(ペルソナ)」を与え、「何をしてほしいか」を具体的に指示し、「どのような形式で答えてほしいか」を指定することで、アウトプットの質は劇的に向上します。
表形式での整理、メール文案の作成、メリット・デメリットの比較など、様々な形式を試してみてください。
チャット履歴は消えることを忘れずに
NotebookLMを使う上で非常に重要な注意点があります。
それは、AIとの対話履歴(チャットパネルの内容)は一時的なものであるということです。
ブラウザのタブを閉じたり、ページを更新したりすると、そのセッションのチャット内容は消えてしまいます。
AIとの対話の中で、「これは使える!」という要約や分析結果、アイデアが生まれたら、すぐに回答の右上にあるピン(📌)アイコンをクリックして「ノートに保存」する癖をつけましょう。
保存されたノートは、チャット履歴とは異なり、ノートブック内に永続的に記録されます。この「ピン留め」を使いこなすことが、NotebookLMで得た知見を確実に蓄積していくための鍵となります。
これらの点に留意することで、NotebookLMをより安全に、そして効果的に使いこなし、日々の業務における最強のパートナーとすることができます。
まとめ

本記事では、社労士の先生がGoogleのAIツール「NotebookLM」を使うにあたっての具体的な活用法からセキュリティ、注意点に至るまでを解説してきました。
AIの進化に対して、「仕事が奪われるのではないか」という不安を感じる声も聞かれます 。
しかし、NotebookLMのようなツールとの向き合い方は、それとは全く異なります。
これは、専門家を「代替」するのではなく、専門家を「拡張」するためのテクノロジーです。
ルーティンワークをAIに任せ、人間はより創造的で戦略的な業務に集中する。
これこそが、AI時代を勝ち抜く専門家の新しい働き方だと思います。
ぜひ本記事を参考に、まずは無料版からでもNotebookLMを試してみてください。
先生の事務所の効率化に、この記事が少しでも参考になりましたら幸いです。