
目次
はじめに
顧問先への丁寧な対応に加え、毎年のように複雑化する税制改正のキャッチアップ、そして深刻化する人材不足…。
これらの課題に、頭を悩ませていらっしゃる税理士の先生は多いのではないでしょうか 。
税理士業界は、税理士自身の高齢化と試験受験者数の減少という構造的な要因から、「人材不足」という大きな課題に直面しています。
その一方で、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応など、税理士に求められる業務はますます多様化・複雑化しています。
このような状況下では、記帳代行や税務申告といった従来の業務だけでは価格競争に陥りやすく、顧問先の経営に深く踏み込んだコンサルティング業務など、より付加価値の高いサービスへのシフトが不可欠となっています。
この状況を打開する鍵は、テクノロジーを賢く活用する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」にあります。
しかし、単に紙を電子化したり、ツールを導入したりするだけのIT化(デジタイゼーション)では、根本的な解決には至りません。
業務プロセスそのもの、ひいてはビジネスモデルを変革してこそ、真のDXと言えるのです。
本記事では、Googleが開発したAIツール「NotebookLM」が、いかにして税理士の先生方の業務を根本から変革し、調査・分析業務を劇的に効率化し、高付加価値サービスを創出するための貴重な時間を生み出す「あなただけのパーソナルAI調査員」となり得るのか、その具体的な活用方法から最重要関心事であるセキュリティまで、徹底的に解説します。
NotebookLMとは?ChatGPTとの違いもズバリ解説

多くの先生方が「AI」と聞くと、質問すれば何でも答えてくれるChatGPTのようなツールを思い浮かべるかもしれません。
しかし、専門家が業務で使うには、情報の正確性と信頼性が何よりも重要です。
NotebookLMは、まさにその専門家のニーズに応えるために設計された、まったく新しいコンセプトのAIツールです。
「信頼できる資料」だけが知識源のAI
NotebookLMは、Googleが開発したAI搭載のノート作成・リサーチ支援ツールです。
その最大の特徴は「ソース・グラウンディング(Source-grounding)」という考え方にあります。
これは、AIが回答や要約を生成する際に、ユーザーがアップロードした特定の資料だけを知識源とする、という仕組みです。
AIがインターネット上の不確かな情報から回答を生成するのではなく、指定された信頼できる情報源に根差して(グラウンドして)応答することで、AIがもっともらしい嘘や誤情報を生成する「ハルシネーション」のリスクが劇的に低減されます 。
士業業務のように、一つの間違いが大きな問題になりかねない分野において、これは決定的に重要な要素です。
読み込ませることができる資料(ソース)の種類も豊富で、PDFやテキストファイルはもちろん、Googleドキュメント、WebサイトのURL、さらにはYouTube動画(の字幕情報)まで対応しています 。
また、資料に含まれる図やグラフ、画像の内容を認識し、それらに関する質問にも答えることができます。
例えば、官公庁のWEBサイトページや自社のマニュアルのpdfなどを取り込んで使うことが出来ます。
NotebookLMが生成した回答には、必ず引用元(Citations)が付記されます 。
回答の横にある番号をクリックするだけで、元の資料のどの部分を根拠にしているのかが瞬時にハイライト表示され、いつでも事実確認(ファクトチェック)が可能です。
これにより、先生はAIの回答を盲信するのではなく、あくまで「信頼できるアシスタント」として、安心して活用することができるのです。
NotebookLMがもたらす変革を視覚的にご理解いただくために、従来の情報収集との比較を以下の表にまとめました。
項目 | 従来の方法 | NotebookLMを活用した場合 |
情報検索 | 官公庁HP、専門書、判例データベース等を個別に検索。適切なキーワードの選定が難しく、情報が点在。 | 関連資料を一度アップロードすれば、自然な言葉で複数の資料を横断的に質問できる。 |
時間 | 数時間~数日。膨大な資料を一つひとつ読み込む必要がある。 | 数分~数十分。AIが瞬時に資料を読み込み、要約・分析を行う。 |
正確性 | 読み間違いや解釈の誤り、重要な情報の見落としといったヒューマンエラーのリスクが常に存在する。 | 回答には必ず引用元が明示され、常に一次情報に立ち返れるため、ファクトチェックが容易かつ確実。 |
知識の定着 | 読んだ内容を別途メモやノートにまとめ、手動で整理する必要がある。 | 重要な回答や発見を「ピン留め」するだけで、自動でノートが作成され、知識がツール内に蓄積される。 |
負担 | 膨大な情報の中から必要な箇所を探し出す精神的・時間的負担が大きい。 | 調査の初期段階(情報の洗い出し・整理)をAIに任せ、人間はより高度な分析・判断に集中できる。 |
ChatGPTとの決定的な違い
では、なぜ専門業務にはChatGPTよりもNotebookLMが適しているのでしょうか。
その違いは、AIが情報を参照する「範囲」にあります。
ChatGPT(一般的な生成AI)
インターネット全体という「オープンな世界」の膨大な情報を学習しています。
そのため、一般的な知識に関する質問や、創造的なアイデア出しには非常に強力です。
しかし、その情報源には不正確なものや古いものも含まれており、専門的な回答を求める際には常にハルシネーションのリスクが伴います。
NotebookLM
先生が選んだ法律、判例、クライアント資料といった「クローズドな世界」の情報だけを学習します。
つまり、先生の専門知識や信頼する情報でパーソナライズされた「専門家AI」になるのです。
士業の業務で求められる答えは、ほとんどの場合、インターネットの海の中ではなく、先生の手元にある資料の中に存在します。
NotebookLMは、その手元の資料を知能化し、対話可能なデータベースへと変えるツールなのです。
この違いを理解することが、AIを業務で使いこなすための第一歩です。
以下の比較表で、その特性を整理してみましょう。
NotebookLMとChatGPTの比較
特徴 | NotebookLM | ChatGPT (一般的な生成AI) |
主な情報源 | ユーザーがアップロードした信頼できる資料 | インターネット上の膨大で不特定多数のデータ |
ハルシネーションリスク | 低い(引用元で常に確認可能) | 高い(事実と異なる情報を生成する可能性) |
得意なこと | 専門資料の読解、要約、分析、情報整理 | アイデア出し、文章作成、一般的な質問への回答 |
情報の信頼性 | 非常に高い(自分の資料がベース) | 常にファクトチェックが必須 |
データプライバシー(学習利用) | 個人のデータはAIモデルの学習に使われない | 入力データがモデルの学習に使われる可能性がある |
このように、一般的な情報収集や創造的な作業にはChatGPT、そして正確性と信頼性が求められる専門業務にはNotebookLMと、目的によって使い分けることが賢明です。
NotebookLMは業務の質と効率を飛躍させる強力なツールとなります。
税理士のNotebookLMの具体的活用方法
それでは、税理士業務の具体的なシーンに沿って、NotebookLMがいかに強力な武器となるかをステップバイステップで解説します。
【活用方法1】複雑な税法・通達・判例のリサーチと解釈
毎年のように改正される税法、難解な言い回しの通達、そして膨大な過去の判例の中から、特定の案件に必要な情報を迅速かつ正確に見つけ出すのは至難の業です。
そこで以下のようにNotebookLMを活用する方法があります。
- 国税庁のWebサイトから、関連する税法条文、所得税基本通達などのPDF、そしてタックスアンサーの該当ページのURLなどをNotebookLMにソースとして追加します。
- チャットボックスに、例えば「令和〇年度税制改正における、中小企業の交際費の損金不算入制度の特例について、具体的な要件と適用期限を教えてください」といった、具体的な質問を自然な言葉で入力します。
- NotebookLMは、読み込んだ複数の資料(税法、通達、解説サイト)を横断的に分析し、それぞれの資料の該当箇所を引用しながら、要点を整理して回答します。これにより、複数のWebサイトやPDFファイルを行き来する必要がなくなり、リサーチ時間を大幅に短縮できます。
【活用方法2】顧問先別「専用ナレッジベース」の構築
顧問先ごとに異なる事業内容、過去の税務相談の経緯、特殊な会計処理など、情報は属人化しがちです。
担当者が変わった際の引き継ぎが不十分だと、サービスの質が低下し、顧客満足度を損なうリスクがあります。
そこで以下のようにNotebookLMを活用する方法があります。
- 顧問先ごとに「ノートブック」を作成します。
- そのノートブックに、過去の議事録(テキスト化)、決算申告書(PDF)、重要なメールのやり取り(テキストファイルとして保存)、顧問先の事業計画書や定款などをソースとしてアップロードします。
- 「〇〇社の前期の役員報酬はいくらでしたか?」「△△の設備投資について、以前どのような税務上の相談がありましたか?」といった質問を投げかけるだけで、AIが過去の記録に基づいて即座に回答します。引用元をクリックすれば、元の議事録や申告書の該当箇所をすぐに確認できます。これにより、担当者以外でも迅速かつ正確な対応が可能になり、事務所全体のサービス品質が向上します。
【活用方法3】新人・若手スタッフの即戦力化と教育コストの削減
慢性的な人材不足の中、新人や若手スタッフの教育に十分な時間を割けないのが実情です。
しかし、教育不足は業務上のミスにつながり、結果的にベテランスタッフのレビュー負担を増やすという悪循環に陥りがちです。
そこで以下のようにNotebookLMを活用する方法があります。
- 事務所独自の「教育用ノートブック」を作成します。
- ソースとして、所内業務マニュアル、確定申告の手順書、過去の研修資料の動画(YouTubeに限定公開でアップロードし、そのURLを追加)、よくある質問とその回答集(FAQ)などを読み込ませます。
- 新人は、業務で分からないことがあれば、まずこのNotebookLMに質問します。「減価償却の定率法の計算方法を、うちの事務所で使っている会計ソフトの操作手順に沿って教えて」と聞けば、マニュアルに基づいた具体的な回答が得られます。
この活用法は、単なる教育コストの削減に留まりません。
ベテラン税理士の頭の中にある暗黙知やノウハウをNotebookLMに集約することで、事務所全体の知識レベルを底上げし、業務品質を標準化する効果が期待できます。
これは、個々のスタッフのスキルに依存した属人的な業務運営から脱却し、事務所として一貫した高品質なサービスを提供するための重要な一歩です。
いわば、24時間365日対応してくれる「仮想OJT担当者」を導入するようなものと言えるでしょう。
【活用方法4】高付加価値業務(事業承継・M&A)の提案力強化
事業承継やM&Aは、税理士事務所にとって今後の重要な成長分野ですが、関連法規やデューデリジェンス項目が多岐にわたり、提案準備に多大な時間がかかります 。
そこで以下のようにNotebookLMを活用する方法があります。
- 「事業承継・M&Aリサーチ」ノートブックを作成します。
- M&Aや事業承継に関する専門書(電子書籍のPDF)、関連法規(会社法、民法など)のWebサイト、先行事例の分析レポートなどをソースとして読み込ませます。
- 「非上場株式の評価方法について、考えられる手法を全てリストアップし、それぞれのメリット・デメリットを比較表形式でまとめてください」といった、高度な指示を出します。
- AIが論点を整理し、チェックリストや提案書の骨子を作成してくれます。これにより、税理士は初期調査の時間を大幅に短縮し、その時間をより戦略的な検討やクライアントとの対話、スキームの構築といった、人間にしかできない高度な業務に集中させることができます。
【活用方法5】法改正情報のスピーディなキャッチアップと所内共有
電子帳簿保存法やインボイス制度など、頻繁に更新される情報を常に追いかけ、所員全員に正確に周知徹底するのは大変な労力です。
そこで以下のようにNotebookLMを活用する方法があります。
- 「法改正キャッチアップ」ノートブックを一つ作成します。
- 国税庁の特設サイトのURLや、信頼できる専門家が発信している解説記事のURLを定期的にソースとして追加していきます。URLをソースにした場合、元のWebページが更新されれば、その最新情報に基づいて回答を生成してくれるため、再アップロードの手間が省けるという利点があります。
- NotebookLMの「ソースガイド」機能を使えば、追加した資料の概要が自動で生成されるため、情報の全体像を素早く把握できます。
- 「今回の改正で、電子取引データの保存要件について、宥恕措置終了後の変更点を教えてください」と質問し、得られた回答を「メモ」機能で保存・整理します。このメモはノートブック内で共有できるため、所内での情報共有が格段にスムーズになります。
NotebookLMの基本的な使い方
理論は分かったけれど、実際にどうやって使えばいいのか不安、という先生方もご安心ください。
ここでは、NotebookLMの基本的な操作方法を6つのステップで解説します。
NotebookLMを使うための6つのステップ
NotebookLMは専門的な知識は一切不要で、Googleアカウントさえあれば誰でもすぐに始められます。
【ステップ1】アクセスとログイン
NotebookLMの公式サイトにアクセスし、お持ちのGoogleアカウントでサインインします。
【ステップ2】ノートブックを作成する
ログインすると、ダッシュボード画面が表示されます。
まずは、情報を整理するための箱となる「ノートブック」を作成しましょう。
画面左上にある「+ 新しいノートブック」ボタンをクリックします 。
このノートブックが、案件ごとの専用フォルダの役割を果たします。
例えば「【●●様】△△申請」のように、分かりやすい名前を付けましょう。
【ステップ3】ソース(資料)のアップロードする
ノートブックを作成すると、次に情報の元となる「ソース」を追加するよう促されます。
PDF、Googleドライブ上のファイル、ウェブサイトのURL、コピーしたテキスト、YouTube動画など、様々な形式に対応しています。
PC上のファイルをドラッグ&ドロップするだけで簡単に追加できます。
- 例1:PDFのアップロード 「PDF」を選択し、お使いのPCに保存されている法律の条文や助成金の手引きなどのファイルを選んでアップロードします。
- 例2:Webサイトの追加 「ウェブサイト」を選択し、官公庁のページなど、参考にしたいウェブページのURLを貼り付けて「ソースを追加」をクリックします。
ソースを追加すると、画面左側のパネルにアップロードした資料の一覧が表示されます 。これでAIとの対話の準備は完了です。
【ステップ4】チャットで質問する
画面下部にあるチャットボックスが、AIへの指示や質問を入力する場所です 。
ここに、自然な日本語で話しかけるように入力します。
入力例:「この資料の要点を3つにまとめてください」
すると、中央のパネルにAIからの回答が表示されます。
特に便利なのは、回答の文中にやといった青い四角で囲まれた番号(引用)が付いている点です。
この引用番号をクリックすると、画面左のソースパネルで、その回答の根拠となった箇所が黄色くハイライト表示されます。
これにより、いつでも情報の正確性を確認できます。
【ステップ5】ノートブックガイドの活用する
NotebookLMの真骨頂とも言えるのが、画面右下の「ノートブックガイド」にある自動整形機能です。
アップロードしたソースを基に、様々な形式のドキュメントをワンクリックで生成できます。
- FAQ(よくある質問): 資料内容に基づいたQ&Aを自動生成します。
- タイムライン: 資料から日付や出来事を抽出し、時系列に整理します。
- 学習ガイド: 専門用語の解説や、内容理解を深めるための練習問題を生成します。
【ステップ6】回答の保存(ピン留め)とメモ機能
チャットでのやり取りは一時的なもので、ブラウザを閉じると消えてしまいます。
重要な回答や気づきは、必ず保存しておきましょう。
各回答の右上にあるピン(📌)のアイコンをクリックすると、その内容を「ノート」として保存できます 。
保存されたノートは、チャットとは別に永続的に残り、後から見返したり、チームで共有したりすることが可能です。
また、自分で気づいたことなどを手動でメモとして追加することもでき、そのメモもAIの分析対象に含めることができます 。
料金プランについて
NotebookLMは、基本的な機能を無料で利用できます。個人での利用や、まずは試してみたいという先生方には十分な機能が提供されています。
さらに多くの機能を使いたい方向けに、有料プラン「NotebookLM Plus」も用意されています。無料版と有料版の主な違いは、一度に扱える資料の数や、1日に行える質問の回数などの「量」に関する制限です。業務で本格的に活用し、事務所全体の生産性を向上させたい場合は、有料プランへのアップグレードを検討する価値があるでしょう。料金はGoogle Workspaceのビジネスプランや、個人向けのGoogle One AI Premiumプラン(月額2,900円など)に含まれる形で提供されています。
※2025年6月22日時点の情報です。
安心して使うために ― セキュリティとAIの限界
士業の先生方が新しいツールを導入する上で、最も懸念されるのは「クライアント情報のセキュリティ」と「守秘義務」でしょう。
この点は、どれだけ強調してもしすぎることはありません。
NotebookLMのセキュリティとプライバシー
まず、Googleは公式に「NotebookLMにアップロードされたデータや、AIとのやり取りの内容を、GoogleのAIモデルのトレーニングに使用することはない(NotebookLMの詳細)」と明言しています。
アップロードされた資料は先生のアカウント内でのみ利用され、他のユーザーに見られることはありません。
これは、一般的な生成AIがユーザーの入力データを学習に利用する可能性がある点との大きな違いであり、機密情報を扱う専門家にとって非常に重要な安心材料です。
顧問先の情報を扱うなら「Google Workspaceアカウント」
NotebookLMは、利用するGoogleアカウントの種類によって、データの取り扱いに関するプライバシー保護のレベルが根本的に異なります。この違いを正確に理解することが、リスク管理の第一歩です。
- 個人用Googleアカウント(@gmail.comなど)の場合:
- Googleの利用規約が適用されます。この規約では、サービスの改善や不正利用の防止などを目的として、Googleの人間のレビュー担当者が入力内容を確認する可能性が留保されています 。
- たとえその可能性が低くとも、第三者に顧客の機密情報や個人情報が閲覧されるリスクが存在する以上、税理士法上の守秘義務の観点から、このリスクは許容できません。したがって、クライアント情報を扱う業務での利用は絶対に避けるべきです。
- 法人用Google Workspaceアカウントの場合:
- Google Workspace利用規約および、より厳格な「データ処理に関する追加条項(DPA: Data Processing Addendum)」が適用されます 。
- この契約に基づき、エンタープライズレベルのセキュリティとプライバシー保護が提供されます 。
- 具体的には、アップロードしたファイル、チャットの履歴、AIの回答は、人間のレビュー担当者によるレビューや、AIモデルの改善のために使用されることはないと明確に保証されています 。
- データはGmailやGoogleドライブといった他のGoogle Workspaceのコアサービスと同様に扱われ、厳格なセキュリティポリシーとコンプライアンスの下で保護されます 。
この違いを、以下の比較表しましたのでご参照下さい。
項目 | 個人用Googleアカウント | 法人用Google Workspaceアカウント |
---|---|---|
項目 | ||
データの人によるレビュー | フィードバック提供時などにレビューされる可能性あり | レビューされない |
AIモデルの学習への利用 | 利用されない | 利用されない |
セキュリティ基準 | 標準的なセキュリティ | エンタープライズレベルのセキュリティ・プライバシー保護 |
準拠する契約 | Google利用規約 | Google Workspace利用規約、データ処理に関する追加条項(DPA) |
安全に活用するための徹底事項
ただし、ツールのセキュリティが強固であっても、それを使う側の意識と実践が伴わなければ意味がありません。
安心してNotebookLMを活用するために、以下の点を徹底することをお勧めします。
- 情報の匿名化を心がける: ツールが安全であるとはいえ、万が一のリスクに備えるのがプロフェッショナルの姿勢です。特に機密性の高い個人情報(氏名、生年月日、パスポート番号など)は、アップロードする前に仮名に置き換えるなどの匿名化処理を施すことを推奨します。
- クライアントの同意を検討する: 業務でAIツールを利用することについて、事前にクライアントへ説明し、理解を得ておくことも有効な手段です。ツールの安全性と、活用することでクライアントにもたらされるメリット(迅速かつ正確な手続きなど)を説明することで、より深い信頼関係を築くことができます。
- Googleアカウントのセキュリティを強化する: NotebookLMのセキュリティは、土台となるGoogleアカウントのセキュリティに依存します。推測されにくい強力なパスワードを設定し、必ず二段階認証を有効にしてください。これが最も基本的かつ効果的な情報漏洩対策です。
AIの限界
最後に、忘れてはならないのは、AIはあくまで「ツール」であるという事実です。
NotebookLMは驚くほど優秀なリサーチアシスタントですが、最終的な法的判断や、クライアントの人生に寄り添った最適な提案を行うことはできません。
AIが生成したドラフトや要約を鵜呑みにするのではなく、必ずご自身の専門的な知見で最終確認を行い、責任を持つ。
この原則を徹底することが、AI時代における専門家の価値をさらに高めることにつながります。
NotebookLMを使いこなすための注意点とヒント

NotebookLMは非常に強力なツールですが、万能ではありません。
その特性と限界を正しく理解し、賢く使うことで、その価値を最大限に引き出すことができます。
ここでは、先生方が陥りがちな注意点と、より良い結果を得るためのヒントをいくつかご紹介します。
AIの回答は必ずファクトチェック
NotebookLMはソース・グラウンディングによりハルシネーションのリスクが低いとはいえ、AIが情報を100%正確に解釈するとは限りません。
特に、複雑な法的文章や、スキャンしたPDFで文字認識が不完全な場合などに、内容を誤って解釈する可能性があります。
AIの回答は、あくまで「非常に優秀なアシスタントが作成した第一稿」と捉えましょう。
重要な判断を下す前には、必ず引用元機能を使って元のソースを確認し、ご自身の専門知識で最終的なファクトチェックを行う習慣をつけてください。
AIは業務を加速させるためのツールであり、専門家としての最終的な判断責任を代替するものではありません。
ソースの限界を理解する
NotebookLMが一度に扱える情報量には物理的な上限があります。
現在の制限は、1つのソースあたり50万ワード、またはファイルサイズ200MBまでとなっています。(2025年6月23日時点)
この上限を超えた部分は、AIが認識・分析することができません。
数百ページに及ぶような非常に分厚い法律の解説書や、長大な報告書をソースとして使いたい場合は、そのままアップロードするのではなく、章ごとやテーマごとにファイルを分割してからアップロードすることをお勧めします。
これにより、文書のすべての部分がAIの分析対象となり、より網羅的で正確な回答を得られるようになります。
プロンプト(指示文)のコツ
AIから質の高いアウトプットを引き出すためには、質の高いインプット、つまり「良いプロンプト」が不可欠です。
漠然とした指示では、AIも漠然とした回答しか返せません。
具体的で、役割や文脈を明確にしたプロンプトを心がけましょう。
- 悪いプロンプトの例:
「この就業規則について教えて」
- 良いプロンプトの例:
「あなたは経験豊富な社労士として、この就業規則案をレビューし、中小企業が見落としがちな労務リスクの観点から、修正すべき点を3つ、具体的な条文番号と共に指摘してください」
このように、AIに「役割(ペルソナ)」を与え、「何をしてほしいか」を具体的に指示し、「どのような形式で答えてほしいか」を指定することで、アウトプットの質は劇的に向上します。
表形式での整理、メール文案の作成、メリット・デメリットの比較など、様々な形式を試してみてください。
チャット履歴は消えることを忘れずに
NotebookLMを使う上で非常に重要な注意点があります。
それは、AIとの対話履歴(チャットパネルの内容)は一時的なものであるということです。
ブラウザのタブを閉じたり、ページを更新したりすると、そのセッションのチャット内容は消えてしまいます。
AIとの対話の中で、「これは使える!」という要約や分析結果、アイデアが生まれたら、すぐに回答の右上にあるピン(📌)アイコンをクリックして「ノートに保存」する癖をつけましょう。
保存されたノートは、チャット履歴とは異なり、ノートブック内に永続的に記録されます。この「ピン留め」を使いこなすことが、NotebookLMで得た知見を確実に蓄積していくための鍵となります。
これらの点に留意することで、NotebookLMをより安全に、そして効果的に使いこなし、日々の業務における最強のパートナーとすることができます。
まとめ

本記事では、社労士の先生がGoogleのAIツール「NotebookLM」を使うにあたっての具体的な活用法からセキュリティ、注意点に至るまでを解説してきました。
AIの進化に対して、「仕事が奪われるのではないか」という不安を感じる声も聞かれます 。
しかし、NotebookLMのようなツールとの向き合い方は、それとは全く異なります。
これは、専門家を「代替」するのではなく、専門家を「拡張」するためのテクノロジーです。
ルーティンワークをAIに任せ、人間はより創造的で戦略的な業務に集中する。
これこそが、AI時代を勝ち抜く専門家の新しい働き方だと思います。
ぜひ本記事を参考に、まずは無料版からでもNotebookLMを試してみてください。
先生の事務所の効率化に、この記事が少しでも参考になりましたら幸いです。