記帳代行を税理士ではなく代行業者に依頼するメリットと注意点

[記事公開日]2015/12/01
[最終更新日]2016/12/02
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記帳代行を税理士ではなく代行業者に依頼するメリット

「どうせ記帳代行をお願いするんだったら、税理士に記帳代行も顧問契約も一緒にお願いした方がいいんじゃない?」と思われるかもしれません。

確かに、「記帳」と「決算申告」は非常に密接な関係にありますので、同じ人に依頼した方が良いという場合はあります。

しかし、記帳代行業者に依頼することでのメリットというものもあるのです。

「何故、記帳代行業者に記帳代行を依頼するメリットがあるのか?」を判りやすくご説明していきたいと思います。

 

記帳とは

記帳とはまずは「記帳」とは、どういった作業なのかを簡単に見てみましょう。

「記帳」とは、簡単に言いますと「お金の流れを記録する」作業です。

「電車で移動するために500円で切符を買った」「10万円のプリンターを購入した」など、会社のお金の出入り一つ一つを記録する作業です。

会社のお金の記録と聞くと税理士を思い浮かべる方もいらっしゃると思いますが、記帳代行自体は資格は必要ありません。

例えば、行政書士であっても記帳代行を行う事は出来ます。(日本行政書士会「行政書士の業務」

それ以外に、全く無資格でも記帳代行を行っているところはあります。

但し、決算申告の代行は税理士しか出来ませんので、その点は十分ご注意下さい。

 

記帳代行業者に依頼する3つのメリット

先程ご説明しましたように「記帳代行業者」といっても税理士がしている場合もありますし、行政書士等の税理士以外の士業がしている場合や特に資格は無く個人でしている場合もあります。

ここでは、税理士とそれ以外の記帳代行業者に記帳をお願いした場合に一般的に想定されるメリットを考えてみたいと思います。

必ずしも全ての記帳代行業者に当てはまるものではありませんので、詳細は実際に記帳代行を依頼される業者にご確認下さい。

 

【メリット1】業者の変更が簡単にできる。

記帳代行業者のメリット1記帳というのは月単位で行うものなので、極端な言い方をすれば、1ヶ月で契約を終了して別の業者に切り替えることも可能です。(但し、契約書の中に契約期間が定められている場合もありますので、その場合は契約書で定められた期間は解約出来ないということもあります。)

業者をかえても、記帳自体がきちんとされていれば決算申告には差し支えありません。

一旦契約してみたものの、対応が悪かったり、返信が遅かったりして他の業者に変更したいという場合は、比較的簡単に変更することが出来ます。

しかし顧問税理士に記帳代行を依頼している場合、決算申告も含めての契約となっている場合もありますので、簡単に変更することが出来ない場合もあります。

 

【メリット2】税理士の変更が簡単に出来る。

顧問契約をしている税理士との契約を解除するのは、それまでの人間関係もあり、簡単に出来るものではありません。

税務に関して言いたい事があっても、素人の自分が「先生」である税理士に意見し難いということもあると思います。

いろんな税理士のホームページを見て「うちの顧問料は何でこんなに高いのかな?」と感じたり、「毎月訪問してもらわなくてもいいから、安くしてもらえないかな」と思っても、料金を安くして欲しいという交渉はなかなかやりにくいものです。

その点、記帳代行業者の提携税理士であれば、業者を通じて料金設定など税理士に言いたい事を伝えてもらう事も可能です。

その税理士が気に入らない場合は別の提携税理士に変えてもらう事も可能です。

記帳代行業者自体を変更してしまって、新しい記帳代行業者とその提携税理士を探してもいいのです。

顧問契約の税理士との解約と比べ、比較的気を使うことなく、税理士を簡単に変更することが出来る点がメリットであると言えるでしょう。

 

【メリット3】決算申告とセットで合計金額が安くなる。

費用が下がる「記帳」は言ってみれば単純労働なので、積極的にやりたいと思っている税理士は意外に少ないものです。

ですから、料金を下げてまで「記帳代行」をしようとしない為、税理士の記帳代行は比較的高めの料金設定になっている場合が多いのです。

記帳を代行してもらうのは、「税理士に決算申告をしてもらうのに必要な作業を自分でするのが面倒」という理由がほとんどです。

記帳だけ業者に代行してもらって、決算申告書は自分で作成して申告するというケースはあまりありません。

税理士資格の無い記帳代行業者は、自身では決算申告が出来ないので、決算申告までのサービスを提供しようとすると、税理士と提携する必要があります。

記帳代行業者の料金+提携税理士の決算申告料金が、税理士が記帳代行をして決算申告をする場合よりも高い料金になると、記帳代行業者に依頼するメリットを感じてもらえませんので、記帳と申告のトータル料金で安くなるように設定しているケースが多いと言えます。(これも業者によりますので、個別にご確認お願いします)

 

記帳代行業者に依頼する時の5つの注意点

それでは、記帳代行を業者に依頼する場合に、どのような点に注意しなければいけないのかを見ていきましょう。

 

【注意点1】誰が決算申告をするのか。

「記帳」と「決算申告」は密接な関係にあるため、決算申告まで含めてどのような流れになるのかを確認しておく必要があります。

決算申告は納税者本人か税理士しか出来ません

繰り返しになりますが、この点は絶対に覚えておいてください。

 

提携税理士が申告

記帳代行業者の提携税理士が決算申告するのが一番安心です。

記帳と決算申告というものは本来セットになっているものです。

記帳をせずに決算申告をすることは出来ません。

ですから、「記帳」という日々の実務を行う記帳代行業者と「決算申告」という年に1回の実務を行う税理士が緊密に連絡をとりあったサービスを提供するというのが一番理想的なのです。

 

納税者(あなた)が探した税理士が申告

申告者は誰か上述しました通り、「記帳」と「決算申告」というものは切っても切れない関係にあります。

これを切り離して、「記帳だけ」「決算申告だけ」とした場合、トラブルになる事も想定されます。

例えば、記帳代行業者が行った記帳を基に、あなたが探してきて契約した税理士が決算申告をしたとします。

この申告内容で税務署から申告漏れの指摘があった場合どうなるでしょうか?

記帳代行業者は「あなたからもらった資料を基にきちんと記帳しました。申告は税理士さんの責任ですよ」と言うかもしれません。

税理士は「記帳代行業者さんからもらった記帳データを基に申告しました。記帳内容の正誤は記帳代行会社さんの責任ですよ。」と言うかもしれません。

こういったトラブルを避けるためにも、記帳代行業者は決算申告も任せられる提携税理士のいる業者を選ばれるのが良いでしょう。

 

【注意点2】「違法行為」に該当していないか。

記帳代行業者が税理士資格を持っている場合は何の問題もありません。

しかし、税理士資格の無い記帳代行業者が「決算申告まで請け負います」と言う場合、下記のような違法行為に該当しないか、しっかり確認をしてから依頼する必要があります。

 

あなたの名前で記帳代行業者が申告

NG税理士資格の無い人は、代行で税務申告書類を作成することが出来ませんので、作成した場合はその時点で税理士法に違反になります。

税理士資格のない記帳代行業者が作成した書類に、あなたが署名捺印して申告した場合でも同様に税理士法違反になります。

あなたの署名(本人が自筆で氏名を書くこと)と捺印が必要な書類に、例えあなたに説明していたとしても、業者があなたの名前を書いて捺印する事も違法行為ですので、気をつけて下さい。

 

名義貸しで代行業者が申告

税理士資格のない記帳代行業者が作成した税務申告書類に、税理士が署名捺印(又は電子申告)するような場合も「名義貸し」といって違法行為となります。

提携税理士が決算申告を行うという場合は、その提携税理士とも一度は会って話をされることをおすすめします。

 

【注意点3】コミュニケーションが密にとれるか。

コミュニケーション記帳代行会社によっては、領収書などを郵送するだけで、実際に会う事が出来ないという会社もあります。

特に価格を安く大量に情報処理をすることを強みにされている業者の場合は、実際に会ってゆっくり話をするというのは難しいかもしれません。

とにかく価格重視という場合は、「コミュニケーション」よりも「金額」に重点をおいて選ばれるのもいいでしょう。

ただ、あなたの会社の重要な情報を預けるのですから、出来るだけ記帳代行業者に実際に会って信頼出来る相手かどうかを確かめるのがよいかと思います。

 

【注意点4】価格設定が判りやすいか。

料金設定設定金額を見て「安い!」と思って契約してみたら、細かいオプションがたくさんあって、結局他のところと同じか高くなってしまった・・・という事もあります。

以下に代表的なオプション例を挙げてみます。

 

創業1期目限定

「安い!」と思って喜んで契約した後に、「2期目以降はこちらの価格になります。」と提示された金額が他のところよりも高くなっている、というケースもあります。

1期目だけ安くても2期目以降が割高になってしまうのであれば、結果として「割高な契約をしてしまった」ということになってしまいます。

明確な金額が書かれておらず、「2期目以降は1期目の状況を見てから正式にお見積させて頂きます」というケースもあります。

その場合は、ご契約される前に2期目以降の料金設定の条件を確認されるのがよいでしょう。

 

「○○円~」という表現

細かい条件が書かれておらず、「1,980円~」のような表記はご契約前に自分の会社で契約した場合の料金はもちろん、今後商売が大きくなった場合を考えて、料金設定の条件の確認が必要です。

「~」と最低料金の条件は非常に狭い範囲で設定されていることもありますので、十分気をつけて下さい。

 

記帳代金件数

例えば、「記帳代行1,980円~」というサービスがあったとします。

「これは、安い!」と思って細かいところを見ずに即契約したところ、1,980円は月の仕訳数が30の場合の設定であって、あなたの会社は月の仕訳数が100件あり、100の場合は月額15,000円になったというケースもあります。

仕訳件数で価格設定を分けている場合は、必ずあなたの会社の仕訳数が月にどれくらいあるかを確認してから、記帳代行料金を確認して下さい。

 

現金出納帳の作成

現金出納帳とは、日々の現金の入金・出金を発生順に記録するための帳簿です。

現金出納帳の作成は基本的には記帳代行業務に含まれていない事が多く、作成を依頼する場合は別途費用がかかることになります。

(現金出納帳作成込みで料金設定されている場合もあります)

もし記帳代行を依頼する業者のホームページ等に現金出納帳に関して何も書かれていない場合は、作成費込みなのか、別料金の場合はいくらかかるのか、を確認されると良いでしょう。

 

【注意点5】契約解除の条件が明示されているか。

記帳代行業者を利用するメリットの一つに「簡単に業者を変更できる」という点があります。顧問税理士を変更するとなると事務作業もさることながら、精神的にも大変な負担がかかります。

その点、記帳代行業者の変更は比較的簡単に出来ます。(詳しくは『記帳代行を税理士ではなく代行業者に依頼するメリットと注意点』をご参照下さい。)

記帳代行を始めるにあたって、システムの設定や必要な設備の支給などがある場合は1年間は契約解除が出来ないという条件がある場合もあります。

契約解除に条件がついている場合、その条件は妥当なものなのか、あなた自身で判断されると良いと思います。

 

記帳代行業者の情報管理

記帳代行を依頼するということは、自分の会社のお金の流れを全て見せることになります。

それだけ重要な情報を扱う仕事ですから、どのように管理されるかもきちんと確認しておきましょう。

 

守秘義務

守秘義務とは、「秘密を守る義務」です。

守秘義務は、法律で以下のように定められています。

刑法134条1項

医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

 

士業の代行業者の場合

先程見ましたように、税理士や行政書士のような職務の特性上秘密の保持が必要とされる職業は、「職務上知った秘密を守るべき義務」が法律(税理士法、行政書士法など)で定められています。

この法律で定められた義務を「守秘義務」といいます。

ですから税理士や行政書士は「秘密保持契約を結んでいませんから」という理由で職務上知った秘密を漏らしたことに対して逃げることは出来ません。

(もちろん守秘義務があっても別途、契約書に秘密保持義務を明記されることをおすすめします。)

行政書士法(秘密を守る義務)

第12条
行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱った事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなった後も、また同様とする。

第22条
第12条(秘密を守る義務)の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
2前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

 

法律で守秘義務が定められていない業者の場合

税理士や行政書士のような特定の専門的な職種については法律で守秘義務と違反した場合の罰則も明文化されています。

法律で守秘義務を規定されていない職業の場合、義務が明記されていないので、当然罰則も明記されていません。

経理情報はあなたの会社にとって重要機密事項ですから、契約書に秘密保持義務を明記されるのがよいでしょう。

特に記帳代行業者が記帳作業を下請けや孫請けに出すようなケースは秘密保持契約を締結しておく必要があると思います。

 

情報管理

「業者で保管してもらっていた領収書を紛失された」「領収書を郵送したのに届いていない言われた」というケースもあります。

こういった事故は100%無くすことは難しいと思うのですが、予防するための対策をどれだけとっているかでリスクは大きく低減されます。

「もしこちらから郵送した領収書が届いていないとなった場合、どうなるんですか?」という具合にトラブルが発生した場合の対処法を先に確認しておくことも重要です。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

まとめ顧問税理士を変更する場合は大変な労力と気を使います。

その点、記帳代行業者の変更は比較的容易である事に加えて、「記帳代行業者の提携税理士と合わないな」と感じた場合が記帳代行業者に伝えて変更することが出来るというメリットがあります。

また、「記帳」という作業は単純作業なので、一般的に税理士は積極的に取り込もうとはしない傾向にあるために、料金も高めに設定されているケースが多いと言えます。

記帳代行業者に頼んだ場合は価格面でのメリットが期待出来ます。

そういったメリットの反面、「決算申告を誰がどのようにおこなうのか」ということを事前にしっかり確認しておかなければ、後で大きなトラブルになる危険があります。

きちんと確認すべき点を確認して、メリットを最大限に活かせるような記帳代行業者を見つけて下さい。

 

 

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1970年生まれ 千葉県木更津市出身 早稲田大学政治経済学部卒 2015年現在、行政書士事務所以外に2つの株式会社を経営する起業家でもある。スモールビジネスで起業する人へのサポートを得意とする。 2009年 某大手電機メーカー退社 2009年 旅行会社の株式会社旅晴好(ろはす)設立 2015年 WEB制作会社 株式会社リヒトス設立 2015年 よこぜき行政書士事務所開設